第14回日本認知症予防学会学術集会 第7回認知症予防専門医スキルアップセミナー

 第14回日本認知症予防学会学術集会の第7回認知症予防専門医スキルアップセミナーにおいて、「抗アミロイド抗体療法時代の画像の見方」について講演いたしました。

内容に関して、深く学びたい方は、老年精神医学雑誌 第35巻 第12号の特集「認知症疾患の診断に必要な検査」をぜひご覧ください。

抗アミロイドβ抗体薬の登場前は、軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)など軽症の認知機能障害は、現行の検査で確定的な診断ができなくても、年単位のフォローアップによって答えにたどり着くことがありました。

しかし、抗アミロイドβ抗体薬登場により、初期診断を徹底的にやり、初期アルツハイマー病の可能性があり抗アミロイドβ抗体薬が希望されれば、アミロイドPETか髄液検査で脳内アミロイドβの蓄積を証明する必要があります。また、典型的なアルツハイマー型認知症だけでなく、臨床的にposterior cortical atrophy、logopenic progressive aphasia、corticobasal syndrome、行動異常型前頭側頭型認知症などと診断された非典型例も、アルツハイマー病の可能性を考慮する必要があります。石井賢二先生のPETの総説はこちら。行動異常型前頭側頭型認知症や意味性認知症でも病理でアルツハイマー病が少なくない、こちらこちら。変形視でアミロイドβ蓄積が証明された自験例、ビタミンB12欠乏症でしたがSPECTがアルツハイマー型認知症のパターンだった例はこちら


アミロイドPETや髄液アミロイドバイオマーカーでアルツハイマー病が確定できるわけではありません。

アミロイドPETイメージング剤の適正使用ガイドライン改訂第4版はこちら。アミロイドPETが陰性であれば、認知機能障害の原因疾患がアルツハイマー病である可能性は低いと判断できます。陽性だった場合は、アルツハイマー病の可能性はありますが、他の認知症を否定できるわけではありません。

レヴィ小体型認知症ではcommon formではアミロイドβ陽性になります。こちら。なぜレヴィ小体型認知症でアミロイドβが蓄積する機序は諸説あります。例えば、レヴィ小体型認知症の病態の中心αシヌクレインがアミロイドβの凝集を促進し、逆にアミロイドβもαシヌクレインの線維化を加速することが示されています。他に、アミロイド前駆体タンパク質の代謝の変化、クリアランス障害などが考察されています。高齢者では混合病理もありえます。

認知機能障害が正常高齢者でもアミロイドβが蓄積していることもあります。こちら。レカネマブ・ドナネマブの適正使用ガイドラインでは、「無症候で Aβ 病理を示唆する所見のみが確認できた者及び中等度以降のアルツハイマー病による認知症患者には投与開始しないこと。」と明記されています。



アミロイドPETは原則視覚読影で判断することになっています。

定量値として、standardized uptake value ratio(SUVR)や、これを元に算出するCentiloidが臨床では用いられていますが、SUVRが定量値として使用できる定常状態になっていない時間帯で撮像されるので、撮像装置や撮像プロトコール(待機時間、撮像時間)、画像再構成法、計測に使用するソフトウェアや計測法が異なれば値も変わってきます。自動的に設定されるソフトウェアの関心領域が限局的な集積が入らない場合は、どうなるか... アミロイドPETの定量の問題点はこちらのページの下の方に書きました。

なので、読影が重要です。florbetapir PETの読影トレーニングはこちら。flutemetamol PETはこちら。それぞれ読影方法が違います。しかし、厳密に決まっているので、脳血流SPECTやFDG PETの読影よりは明快です。

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