東京會舘で開催された、第18回Post stroke depression研究会に参加しました。千葉大学社会精神保健教育研究センター病態解析研究部門教授の橋本謙二先生の、シグマ-1受容体に関する講演を拝聴できました。私は 東京都老人総合研究所ポジトロン医学研究施設 との共同研究で、 パーキンソン病 と アルツハイマー病の論文 を書いております。しかし最近アデノシン受容体研究にシフトしていたので、シグマ受容体の勉強を怠っておりました。しかし本日の橋本先生のご講演で、かつて混沌としていたシグマ-1受容体について、いろいろなことが明らかになったことを知りました。 まず、 シグマ-1受容体は細胞の小胞体に存在し、ミトコンドリアのCa++流入に関与している 、とのことでした。かつては、細胞体に存在するとされ、私のプレゼンテーション資料でも細胞膜に存在しているかのごとく図を書いておりました。直しませんと... いろいろな薬剤( 4-Phenyl-1-(4-phenylbutyl) Piperidine 、 セロクラール など)がシグマ-1受容体に結合することはわかっておりましたが、生体内に存在するシグマ-1受容体リガンドが何かが不明のままでした。かつてはテストステロンやプロゲステロンが候補に挙がっていましたが、本日の講演で、そのほかに、 N,N-dimethyltryptamine と、 dehydroepiandrosterone 3-sulfate も候補になったとのことでした。 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors、SSRI) の fluvoxamine は、単にセロトニンを保持するだけでなく、シグマ-1受容体アゴニストとしても採用している、一方おなじSSRIでも paroxetine ではシグマ-1受容体の作用は弱く、アンタゴニストとして作用しているか、シグマ-1受容体の作用を弱める別な系が作用している可能性を示唆されました。そしてこれが IP3受容体と関連がある そうです。 fluvoxamineによる神経突起伸長増強の様子も、興味深い動画で見ることができました。