蒲田医師会学術講演会 脳卒中Web Seminar
心原性脳塞栓と抗凝固療法について講演しました。
心原性脳塞栓の総説はこちら。
日本医科大学脳神経内科で作った悉皆データベースで、6年間(2011年4月〜2017年3月)非弁膜症性心房細動を有する脳梗塞患者における抗凝固薬の使用、治療、および機能的転帰の変化を調査したところ、DOACで不適切な低容量投与での脳梗塞発症が増えてきた、こちら。
久山町研究で、10年間で脳梗塞の再発は51.3%、心原性脳塞栓では75.2%、こちら。
適切なコントロールのワルファリン、DOAC投与では、再発しても脳梗塞は小さい、こちら。
医療側の理由で抗凝固療法中断による脳梗塞発症はこちら。
心房細動の総説はこちら。
発作性心房細動も慢性心房細動と同じ脳梗塞発症リスク、こちら。
脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)と心原性脳塞栓の関連についてはこちら。アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞でも心房細動を有することあるが、その場合はBNPは高くない、こちら。
非弁膜症性心房細動患者において、アスピリン投与群の脳卒中発症は、非投与群と同等(つまり無効、The Japan Atrial Fibrillation Stroke Trial:JAST)、こちら。Warfarin-Aspirin Symptomatic Intracranial Disease Trial(WASID)、死亡・大出血はaspirinよりwarfarinで増加、しかし虚血性脳卒中の予防は有意差なし、こちら。Bleeding with Antithrombotic Therapy(BAT)研究、併用療法は出血リスク倍増、こちら。こちらの研究でも同じ結果。なので、心房細動を有する脳梗塞患者の2次予防は、病型に関わらず「原則」抗凝固療法単剤が無難です。
Warfarin適正使用情報 改訂版 本編 と Warfarin適正使用情報 改訂版 相互作用各論編 はこちらからダウンロードできます。とんでもないページ数... 薬の相互作用も多数...
DOACは最初NOACと呼んでおりました。
new oral anticoagulant
→もう新しくないだろということで
novel oral anticoagulants
→もう新規でもないだろということで
non-vitamin-K-antagonist oral anticoagulants
しかし、2015年4月、国際血栓止血学会(ISTH)は「今後は直接阻害型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)に統一すべき」との勧告を発表しました。例えば、「non-vitamin K antagonist OAC」とカルテに書かれると、「vitamin K antagonist」(ワルファリン)は不要 と誤解されかねない。
DOACの臨床試験のメタ解析はこちら。warfarinと比べると、脳梗塞予防効果は同等、頭蓋内出血は減少。消化管出血はDOACの方が増えるみたい。
DOACは使いやすいので、非弁膜症性心房細動・深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症以外でも使えるのではないかと、いくつかの研究が行われましたが...
The Investigation of Rheumatic AF Treatment Using Vitamin K Antagonists, Rivaroxaban or Aspirin Studies(INVICTUS)研究、リウマチ性心疾患の心房細動ではwarfarin、こちら。
The Randomized, Phase II Study to Evaluate the Safety and Pharmacokinetics of Oral Dabigatran Etexilate in Patients after Heart Valve Replacement(RE-ALIGN)研究、機械弁患者ではwarfarin、こちら。
The Effective Anticoagulation with Factor Xa Next Generation in Atrial Fibrillation–Thrombolysis in Myocardial Infarction 48(ENGAGE AF-TIMI 48)では、弁膜症の患者が含まれていました。このうちの生体弁患者では、edoxabanとwarfarinの脳梗塞予防効果や大出血の割合が同等、こちら。こちらとこちらの研究でも生体弁でDOAC大丈夫そう。ということで、2020年改訂不整脈薬物治療ガイドラインより生体弁術後の心房細動は「非弁膜症性」、こちら。ただし、生体弁置換術後 3 ヵ月間は洞調律患者でもワルファリンコントロールが推奨 。
Embolic Stroke of Undetermined Source:ESUSでの応用も期待されましたが、こちらとこちらの研究で有効性証明できず。
心房高頻拍エピソードの患者に対するedoxabanも証明できず、こちら。
ということで、DOACの適応症例はやっぱり
- 非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制(リバーロキサバンの小児への使用を除く)
- 静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制(ダビガトランを除く)
DOACには低容量が選択できますが、4剤全て基準が異なります。添付文書をご確認ください。
the Edoxaban Low-Dose for Elder Care Atrial Fibrillation Patients(ELDERCARE-AF)はこちら。
DOAC使用中に脳梗塞発症したらwarfarinや他のDOACに切り替えている先生もいらっしゃいますが、切り替えない方が脳梗塞再発少ないです、こちら。そのDOACで軽く済んだと考えましょう。
座長の松坂医院松坂聡先生より、BNPと関連があるなら、BNPを下げるような降圧剤を使えば心房細動を減少させられるか、というご質問をいただきましたが、回答できませんでした... 不整脈のガイドラインに高血圧が心房細動のリスクと書かれております。
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