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神経疾患Web Seminar

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神経疾患Web Seminarで講演しました。 アルツハイマー病の診断にはバイオマーカーが実臨床で使われるようになりました 。ただし、バイオマーカーのみの診断には 反論 もあります。 パーキンソン病においては、αシヌクレインが上がります。最初のヒトのシヌクレイン画像は、東北大学のグループが、もともとアミロイドイメージングのPETリガンド 11 C-BF227を使って、多系統萎縮症のαシヌクレインをイメージングした 2010年の論文 と思われます。アミロイドβもαシヌクレインも、アミロイドの一種でβシート構造で堆積します。本来アミロイドβを画像化するために開発された 11 C-BF227、これがαシヌクレインにも結合することを応用した研究です。対象が多系統萎縮症、この疾患ではαシヌクレインが蓄積しアミロイドβは蓄積しないことから、αシヌクレインイメージングとして発表されました。病理標本ではパーキンソン病も検討され、確かにαシヌクレインへの結合が確認されましたが、ヒトのPET画像としては論文内で提示されませんでした。 この場合、αシヌクレインが特異結合となります。特異結合・非特異結合の詳細は、 こちら をご参照ください。 なかなかαシヌクレインPETが実臨床への応用が進まない理由は こちらの総説 (2014)を。 その後、シヌクレインPETプローブは、 よりαシヌクレインに特異的に結合するよう開発競争されました 。 18 F-C05-05 PETは こちら 。 体液バイオマーカーの研究も進んでいます。例えば こちら 。 パーキンソン病ではパーキンソニズム発症前に前駆症状がある場合があります。 こちら 。バイオマーカーと前駆症状を組み合わせて判断するという手法もあるでしょう。 αシヌクレインをターゲットとした治療も研究されています 。Cinpanemabは こちら 。Prasinezumabは こちら 。抗体療法の他にも 様々な疾患修飾療法が研究されています 。 こちら も日本語で現状を学べます。 パーキンソン病のリハビリテーションを外来で提供できる体制が重要と思っております。

老年精神医学雑誌第35巻第12号 特集 「認知症疾患の診断に必要な検査」

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 老年精神医学雑誌第35巻第12号に「認知症疾患の診断に必要な検査」と題した特集を組みました。 アルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬の対象は、初期のアルツハイマー病とアルツハイマー病を背景とした軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)です。これまでは、長期のフォローアップが、より正確な認知症診断の一手でした。今後は短期間の認知症疾患の診断が求められます。アミロイドβのバイオマーカーが陰性ならアルツハイマー病は否定的ですが、陽性の場合はアルツハイマー病以外の疾患が否定できるわけではなく、旧来の診断手法が必要です。  また、世間のアルツハイマー病への関心が高まり、外来には軽症の健忘患者が多く受診するようになりました。  そこで本特集は、改めて認知症疾患の診断を学ぶことにより、早期アルツハイマー病の診断を確実にすることを目的としました。 私も冒頭部分を書かせていただきました。 他の総説も、エキスパートの先生方がお引き受けいただき、充実した特集になりました。ぜひご覧ください。

Appropriate Brain Imaging Report 第3回

 Appropriate Brain Imaging Report(ABIR)の第3回目が開催されました。 第2回は こちら 。脳血流SPECTの読影レポートの勉強会です。私が症例を提示し、東邦大学医療センター大森病院放射線科の水村直教授が読影・レポートするという形式です。今回は日本医科大学放射線科の曽原康二先生にも3症例ご提示いただきました。 mini-mental state examination(MMSE)のミニレクチャーでは、複数の日本版とMMSE-Jの違いについてお話ししました。 こちら をご参照。

慶賀光春

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  謹んで新春のお慶びを申し上げます ちなみにヘビはイラストです Adobe Illustratorで写真をトレース ベジェ曲線の点を減らすなどデータを最適化しております 2013年の年賀状の時に作成しました

アリドネパッチ発売1周年記念講演会

アリドネパッチ発売1周年記念講演会でアルツハイマー病の治療について講演しました。 昨年末より本邦でもアミロイドβをターゲットとした治療ができるようになりました。 こちら 。 lecanemab に続き、 donanemab も使用可能になりました。 いずれも初期アルツハイマー病が対象ですから、いかに早期に専門医療機関を受診するかが鍵です。アメリカでは健康診断で認知症のチェックをするので家族の相談が早いのですが、日本は介護保険導入時が多く、認知症診断時期が遅い。 こちら 。東京労災病院がある大森では、 大森医師会が認知症検診を行っている ので、lecanemab対象患者のほとんどが紹介患者です。当初いかに軽度の認知症を集めるかが課題でしたが、私たちは懸念材料がひとつ減りました。 ご紹介いただいたら、正確に認知症の診断をしなければなりません。 lecanemab の治験でも donanemab の治験でも、治験に参加するような認知症のエキスパートでも、エントリーすると2/3程度除外されました。もちろん、mini-mental state examination(MMSE)の点数が基準に達せず除外されるケースもありますが、アミロイドPETなどでアミロイド蓄積が否定されるケースもあります。 新潟大学の研究 でも、臨床的に診断されたアルツハイマー型認知症のうち約40%が、髄液マーカーでアルツハイマー病以外の病理が示唆されました。それだけ初期のアルツハイマー病の診断が難しいということです。 アミロイドβのバイオマーカーだけでアルツハイマー病の診断ができるわけでもありません。 アミロイドPETのガイドライン にも記述されているように、陰性なら認知機能障害の原因疾患がアルツハイマー病である可能性は低いと判断できます。陽性だった場合、アルツハイマー病の可能性がありますが、他の疾患でも陽性なることがあります。例えば、 レヴィ小体型認知症のcommon formはアルツハイマー病理を伴います 。 アミロイドPETでも陽性になります 。そもそも アミロイドPET最初の剖検例 はレヴィ小体型認知症でした。 前頭側頭葉変性症でもアミロイドが溜まっていることがあります 。ただし、 病理の検討 では、行動異常型前頭側頭型認知症と診断された患者のうち、13%がアルツハイマー病、Pick病は...

第29回Neurology SPECT定量検討会

第29回Neurology SPECT定量検討会を開催しました。 北村伸先生 は創設メンバーのお一人でした... 北里大学の我妻慧先生からは、アミロイドPETの撮像についてご講演いただきました。PETの施設基準については こちら 。アミロイドPETでは、白質の非特異結合があり、mortion artifactで灰白質に白質の信号が混じると正しい読影が困難になります。その場合、動く前のデータを使って画像を作るか、やり直すか。顎の固定や、高齢者で亀背気味の場合は首の後ろのスペースをタオルで埋めるなど放射線技師の工夫が紹介されました。 東邦大学医療センター大森病院の水村直先生には、SPECTの画像の作り方をご講演いただきました。正常と異常のコントラストが付くことが目標。午前午後で被放射能が変わるので、フィルターの掛け方も違う。カラースケールも正常・異常がわかるように調節。テクネシウム製剤はカウントが高いのでSNは良い。高齢者では後頭葉・頭頂葉のカウントが高くなるので読影注意。バックグラウンドの集積を撮る場合もあるが、画質を知るにはバックグラウンドのデータも見る。特にDaTSCANはバックグラウンドは線条体のカウント量を知ることができる。DaTSCANのadaptive template registrationの論文は こちら 。

第64回日本核医学会学術総会

 パシフィコ横浜で 第64回日本核医学会学術総会 が開催されました。 シンポジウム03:Prodromal レヴィ小体病とEANM-JSNM Joint Session:Parkinson Imagingを企画させていただき、シンポジウム03ではProdromal 「レヴィ小体病」について講演させていただきました。 An Essay on the Shaking PalsyはAmazonでKindleで 無料で閲覧できます 。 小阪憲司先生が、のちにdiffuse Lewy body disease(DLBD)と呼ばれる、進行する認知症とパーキンソニズムを呈し、大脳皮質に広範なレヴィ小体が出現した剖検例を症例報告されました。 こちら 。 小坂先生はDLBDをアルツハイマー病変を伴うcommon formと伴わないpure formに分類されました。 こちら 。そしてレヴィ小体の存在を特徴とする病態、レヴィ小体病(Lewy body disease:LBD)という概念を提唱されました(小阪憲司ら、精神神経学雑誌 82号: 292-311, 1980)。LBDには group A (diffuse type, = びまん性レヴィ小体病)、group B (transitional type)、group C (brain stem type, = パーキンソン病)の3タイプに分かれ 、のちに cerebral type が追加されました。脳幹型のパーキンソン病はDaTSCANで必ず集積低下がありますが、 レヴィ小体型認知症(Dementia wiht Lewy bodies:DLB)では集積低下がない例もあります 。cerebral typeが該当すると思われます。 1995年第1回国際ワークショップで、レヴィ小体型認知症(dementia with Lewy bodies: DLB)の名称と臨床診断基準が提唱されました。 こちら 。 DLBの診断基準は、核医学検査が重要視されるようになりました 。 パーキンソン病でも同様です 。 認知症を伴うパーキンソン病(Parkisnon's disease:PDD)とDLBを分ける基準は 1-year rule です。しかし科学的根拠に乏しい基準であるため、 1-year ruleを使わずにパーキンソン病としたらどうかと...