第1回千葉県脳卒中連携の会 Chiba Alliance Medical Path-Stroke (CAMP-S)

 昨年来準備をつづけていた、第1回千葉県脳卒中連携の会(CAMP-S)がついに開催されました。会場は千葉県文化会館。私たちプログラム委員は10時集合、県庁職員の方々はもっと早くいらっしゃっていて、設営や資料の準備をしました。ちょっとした学会の規模ですが、まさに手作りです。


 午後1時から、医師・看護師・リハビリテーションスタッフ・医療ソーシャルワーカー(MSW)・薬剤師に分かれて分科会が開催されました。
 医師部会は参加者数が最も少ないことが予想されたので小さな会議場を用意していたのですが、事前受付で予想以上の人数となり、大ホール前のスペースが会場になってしまいました。急性期・回復期・地域生活期から千葉県共用パスなど医療連携についてのプレゼンテーションがありました。亀田メディカルセンター神経内科西村寿貴先生から、急性期病院でエビデンスに基づき高価な抗血小板剤を選択しても、回復期施設以降で変更されている懸念が指摘されました。千葉県リハビリテーションセンター飯塚正之先生からは、回復期ではそのようなことはないとご回答がありましたが、その先の、包括医療の療養施設では安価なアスピリンやチクロピジンに変更されています。医療制度を変えなければ解決しない問題です。千葉脳神経外科病院湧井健治先生からは、連携パスがリハビリテーション病院転院前のトリアージに使用されるのでは、とご質問がありました。このような使用法では、急性期病院に重症の長期入院患者があふれ、新患の救急を満床を理由に断らなければなりません。

 同時進行なので、他の部会は聞けません... また、薬剤部会は会場が離れていたので、写真も撮れませんでした。
 看護部会では、日本医科大学千葉北総病院土肥いずみさんが、印旛脳卒中地域連携パス(InCliPS)の運用実績を報告しました。

 リハビリテーション部会

 福祉関係部会


 ついで、特別講演です。

 脳卒中の医療連携では第一人者の熊本市民病院神経内科橋本洋一郎先生と、熊本機能病院併設介護老人保健施設清雅苑野尻晋一先生をお招きしました。千葉県共用パスのきっかけになったのは、2008年7月の医療連携を推進する会で、橋本先生のご講演を拝聴、懇親会で意見交換をしているなかで、脳卒中地域連携パスの統合化の必要性を参加者が共感したことでした。ですから、この第1回千葉県脳卒中連携の会の特別講演は、橋本先生など熊本県の医療連携をテーマにしました。
 橋本先生には、急性期と回復期の連携についてご講演いただきました。治療の継続性とリハビリテーションの継続性を強調されました。特に、急性期病院でのリハビリテーションが重要です。スルメになった足を、いくらリハビリテーションしてもスルメのまま。急性期病院で廃用が進まないよう、積極的なリハビリテーションが必要なのです。また、重度障害の患者を切り捨ててはならないことも強調されました。印旛脳卒中地域連携パスでは、mRS 5の重度の方もパスにまわす適用基準になっていますが、これを講演などでお話しすると、リハビリテーション病院に嫌な顔をされます... しかし、重度の方も、長期にはなりますが、回復することが報告されています。しかし、私たちの基準は、回復期リハビリテーション病院になかなか自宅退院できない方を増やすことになり、地域全体のリハビリテーション効率を悪くし、本来リハビリテーションにより社会復帰も可能な軽症の方のリハビリテーションの機会を奪うことにもなりかねません。そこで私たちは、重症を担当いただく病院にもパスにご参加いただいています。リハビリテーション病床は、人口10万人あたり50床以上必要とされています。熊本県はクリアーしていますが、千葉県は全国でも最下位争い... 限られた医療資源を有効に使うため、リハビリテーションに適した症例を選んで転院させているとおっしゃる施設もあります。この状況を打開しなければなりません。データの収集・解析も脳卒中地域連携パスでは重要なことですが、手作業でなさっているそうです。しかし、ITに移行するのは必然です。しかし経費が... 脳卒中データバンクの中でできたFileMakerのデータベースを使用しているそうです。脳卒中地域連携パスにはなるべく費用をかけないよう...

 野尻先生は、回復期と維持期の連携について講演されました。維持期での活動性を上げるため、様々な実例をご呈示いただきました。また、International Classification of Functioning, Disability and Health(ICF)を共通言語にした連携システムの構築が必要とお話しされました。雪など地域特有の天候や、坂の地形など、居宅の状態にも対応する必要があります。そして、リハビリテーションの継続。野尻先生はリハビリテーション病院には劣るとはおっしゃいましたが、充実したサービスを提供されています。ちょうど昨日ラーバンクリニック河内先生にご相談していた、これら地域生活期での在宅リハなどの体制が、印旛地区では不足しています。これらのサービスを、クリニックの先生方にお願いするのは困難です。外来で手一杯です。やはり病院が併設すべきなのでしょう。野尻先生の施設をお手本にして、施設ができると良いのですが...


 最後に、全体会議として、医師・看護師・リハスタッフ・MSWの代表のプレゼンテーションがありました。松戸市立病院烏谷博英先生からは、2009年10月に千葉県共用パスを導入した際のご苦労された点をお話しいただきました。松戸市の3次救急を担う病院、昨今の医療情勢で大変な労働環境、医師を筆頭に大変だったようです。県境に近いので、東京都や埼玉県のリハビリテーション病院に紹介することも多いが、千葉県共用パスの使用は拒否されたとか。ちなみに、都内の病院では東京リバーサイド病院がInCliPSにご参加、千葉県共用パスの使用も了承されています。東京湾岸リハビリテーション病院吉鶴法世さんからは、看護師の立場から千葉県共用パス導入によるメリットと問題点が示されました。リハビリテーション・スタッフの立場から、八千代リハビリテーション病院今井基次さんから講演がありました。千葉県共用パスではFIMが評価方法として導入されています。白金整形外科病院佐藤潤さんからは、MSW・福祉関係者からみた共用パスについて講演がありました。千葉県共用パスではMSW用のシートも用意されていて、医師・看護師では欠落しがちな、家族・住居など医療以外で大事な情報を伝達するようになっています。病院関係者だけでなく、クリニックやケアマネージャー、介護スタッフに浸透することが望まれます。
 橋本先生より、地域生活期のリハビリテーションを担保する手段として、都内で在宅リハを支援するシステムが紹介されました。

 参加した日本医大チームです。

 脳卒中地域連携パスの会議終了後の懇親会で、議論できるのが常。今日も次のステップが見えてきました...

 脳卒中地域連携パス(liaison critical pathway for stroke)において、パスシートはツールにすぎません。連携するためのpathway、連携する道筋を明記し、効率と質を改善するのが目的です。今回の会議では、千葉県共用パスのパスシートの普及が目的でしたが、来年度以降はさらに医療体制の改善まで目指せればと思います。

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