第55回日本神経学会学術大会



福岡国際会議場で第55回日本神経学会学術大会が開催されました。5月21日からでしたが、私は23日と本日のみ。

5月23日はポスター会場から。九州場所が行われる福岡国際センターが会場です。九州大学など九州にある大学の神経内科の医局の紹介が展示されていました。


レクチャーシリーズの「診療に役立つ遺伝性ニューロパチーの話」を拝聴しました。京都府立医科大学の中川正法先生からは、その代表であるCharcot-Marie-Tooth病のお話でした。膨大な分類は覚えなくてよいと。本邦の実態はこちら。下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)による医師主導治験が進行中。リハビリは低負荷・高頻度がポイントと。難治の疾患ですが、徐々に医学は進歩。患者の訴えに真摯に耳を傾けることが重要であることを強調されました。信州大学の関島良樹先生からは、アミロイドニューロパチー。こちらも肝移植が有効である他、Tafamidisなど治療薬も開発されました。鹿児島大学の高嶋博先生からは、遺伝性運動性・感覚性・自律神経性ニューロパチー。Nat Rev Mol Cell Biolの総説はこちら

5月24日は新規抗凝固薬(NOAC)のセッション。最初の九州医療センターの矢坂正弘先生のところは遅刻してしまいました... 東京女子医科大学の長尾毅彦先生はモニタリングと中和について。NOACの半減期は短くピークとトラフを形成する事が特徴。ワルファリンのPT-INRのようなバイオマーカーは今のところない。血栓止血学会においてモニタリング指針の策定作業が進行中だそうで。NOACはワルファリンと比べ出血合併症も軽く済む事が多い。どうしても中和する必要がある場合は、4因子プロトロンビン複合体製剤による中和療法が推奨。FFPで凝固因子を注入する方法もやられていますが、有効性は証明されていない。国立循環器病研究センターの豊田一則先生からは、急性期でのNOACの役割。NOACは服用開始数日で血中濃度が定常状態になる事が特徴。Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement(SAMURAI)-NVAF 研究でも急性期入院日数が減少と。ただ、ワルファリンは高齢者・腎機能障害・重症で、NOACは若年・腎機能良好・軽症で使用される傾向あり。急性期での使用はエビデンスの構築が必要と。富山大学田中耕太郎先生からは、慢性期でのNOACの役割について。自施設の状況をご報告いただきました。以前はAf患者にアスピリンが投与されていることが多かったですが、最近は激減。NOAC患者ではワルファリンより脳出血が軽症で済んでいる事が多い印象。

ランチョンセミナーでは、青森県立中央病院馬場正之先生の有痛性末梢神経障害のご講演を拝聴しました。細い有髄線維のAδ線維は、鋭く、速い痛み(一次疼痛)が伝導される。細い無髄線維のC線維は、鈍く、遅い痛み(二次疼痛)が伝導される。末梢神経障害で痛みが無くなるのではなく逆に「痛い」病態は明確ではないと。PINT試験、皮膚生検などのご研究から、糖尿病性神経症も、症状が出る前から神経障害ありと。

ポスターでは、パーキンソン病の画像のセッションで座長をさせていただきました。血流・fMRI・エコー・PET・メラニンイメージングなど、モダリティが全部異なる面白いセッションでした。

神経内科の進歩が感じられる、面白い学会でした。

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