第56回日本神経学会学術大会


朱鷺メッセで開催された第56回日本神経学会学術大会に参加しました。

画像の分野は、タウイメージングとDaT SPECTで盛り上がっています。バイオマーカーとしての位置付けも定着。

[B-01] 教育講演ベーシック 1 明日からの臨床に役立つパーキンソン病診断 up to date

順天堂大学西岡健弥先生から、家族性パーキンソン病。遺伝性パーキンソン病については遺伝子座22個まで。その22番目は順天堂大学船山学先生の論文。CHCHD2はミトコンドリアの電子伝達系に関与し、mitophagyにも。西岡先生の論文はこちら。eurodegeneration with brain iron accumulation(NBIA)のひとつ、beta-propeller protein-associated neurodegeneration (BPAN)。もうひとつがこちら。SNCAのduplicationでDLB/PDDの臨床像。

千葉大学平野成樹先生からは、PET画像について。パーキンソン病の疫学についてはこちら。CBDでDatSCAN正常だった例。こちら。Lewy body diseaseのAChE活性はこちら。DLBでのアミロイドPETはこちら。PDD/DLB spectrumはこちら。dyskinesia例の11C-raclopide PETはこちら。病的賭博例の11C-raclopide PETはこちら。apathyと11C-raclopide PETはこちら。個々の分子を画像化することも大事だが、大脳内のマクロネットワークの障害として捉えることができる脳血流・代謝画像も重要と。

京都府立医科大学徳田隆彦先生からは、生化学的バイオマーカー。アルツハイマー病のバイオマーカーはこちら。パーキンソン病はこちらこちら。徳田先生の論文はこちら。髄液中α-synucleinはオーバーラップが大きい、こちら。meta-analysisはこちらこちら。heterophilic antibody (HA)の影響はこちら。髄液に血液の混入で髄液α-synuclein値に影響。髄液α-synuclein oligomerはこちら。PDDでoligomer多し、こちら。synuclein PETに期待と。

東京都健康長寿医療センター仙石錬平先生は、嗅球・皮膚など病理診断。Lancetのパーキンソン病の総説はこちら。嗅球のα-synucleinopathyはこちら。嗅上皮はこちら。これをMRIでの嗅球の体積に応用、こちら。Pure autonomic failure (PAF)の皮膚生検、こちらこちら

[LS-01] ランチョンセミナー 1 臨床におけるアミロイドPETの意義

国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンターの今林悦子先生から、放射線科の立場から。臨床の現場ではSUVR。ガイドラインもまもなく。根本治療が実現していない現在、pre-clinicalな使用は推奨されない模様。アミロイド陰性で、アルツハイマー病は否定的、陽性では健常・他疾患否定できない。

東京大学岩田淳先生からは、神経内科の立場から。臨床治験に携わった経験より。Florbetapir 国内治験はこちら

[HT-03] ホットトピックス 3 認知症診断におけるタウイメージングの進歩

放射線医学総合研究所分子イメージング研究センターの島田斉先生は、タウイメージングの概要。Neuronの論文はこちら。ワクチン療法でtauopathyは改善せず、こちら

大阪市立大学嶋田裕之先生からは、11C-PBB3 PETによる嗜銀顆粒性認知症・神経原線維変化型認知症、遺伝性アルツイハイマー病。

神経内科千葉の篠遠仁先生からは、CBSとPSP。

東京都健康長寿医療センターの石井賢二先生からは、FTLD。


11C-PBB3は放射線医学総合研究所が開発したPET用放射性薬剤。放射線医学総合研究所は、世界一高い比放射能を実現できるサイトです。つまり、薬剤に放射能がたくさんついているので、微量な薬剤でも十分な信号を得ることができます。脳内に微量に存在するものを標識する場合は、この信号強度が低いと検出できません。こちらをご参照。つまり、放射線医学総合研究所は、分子イメージングに最適なサイトです。そこで開発された薬剤を、他のサイトで合成する場合、同じ比放射能は実現できません。でも、今の所、施設間差は目立たない模様。

[Pe-019] ポスター(英語)神経放射線

座長をやりました。DLBとADのアミロイドPETで分布の違いを証明できなかった、というポスターを貼りました。日本では珍しくポスター会場に日本酒やワインが振舞われました。でも、ポスター審査を終える頃には無くなっていました...

ポスターではDat SPECTの演題が多数。以前脳血流のSPECTの研究が多数ありましたが、核医学画像は一時下火でした... ただ、普及しているソフトウエアでのspecific binding ratio(SBR)は多々問題あり。こちらをご参照ください。パーキンソン病の特徴である左右差がSBRで逆転することもあります。ソフトが算出する数字を鵜呑みにせず、元の画像をしっかり見ましょう。


[HT-07] ホットトピックス 7 培養細胞・モデル動物研究から臨床イメージングへ:プローブ動態および画像所見対比に基づく病態理解と薬剤開発

PETを研究ツールとするものにとって注目のセッション。
放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター原成彦先生からは、タウイメージング・diffusion tensor imaging (DTI)をモデル動物から人への応用。rTg4510 miceを用いたDTIの研究はこちら

理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センターの尾上浩隆先生からは、11C-KTP-Meによる脳内炎症におけるミクログリアのイメージング。NSAIDを網羅的にスクリーニングと。こちら。COX-1に選択的に。microglia。PK11195はmicro+astrocyte。

東京都健康長寿医療センター研究所神経画像研究チームの石渡喜一先生は、神経伝達系PETプローベの開発について。親和性・選択性の違い、非特異結合部位の有無、種差などなど。アデノシンA2A受容体プローベとして11C-preladenantに期待。

浜松ホトニクス中央研究所PETセンター塚田秀夫先生からは、脳内ミトコンドリア機能イメージング用の新規PETプローブの開発。こちら。虚血モデルはこちら。加齢モデルはこちら

東京女子医科大学八千代医療センターの高梨潤一先生からは、MRSを用いた先天性大脳白質形成不全症の研究。NAAはneuron・axonのマーカー、Choは膜のマーカー。Pelizaeus–Merzbacher disease (PMD) の論文はこちら。myelin synthesis-deficient miceはこちら、shiverer miceはこちら

[LS-23] ランチョンセミナー 23 症例から学ぶ治療可能な筋疾患 ~ポンペ病を中心に~

ポンペ病は画像とは無関係ですが、学生の講義を担当しているのでお勉強。以前は、乳児型・小児型・成人型と分類していましたが、小児期以降を遅発性と分類。特徴がないことが特徴... 近位筋優位で肢体型筋ジストロフィー様、乳児型と違い心肥大は少ない。歩けるのに呼吸不全が来ることがある。呼吸不全が早朝の頭痛や不眠に関連。解糖系とは無関係のautophagy。日本は86例にマイオザイム投与中。傍脊柱筋のCTはこちら。筋病理見ても、特徴的所見がないことあり。酸性αグルコシダーゼ(かつては酸マルターゼと呼んでいた)酵素活性を調べること。

[E-08] 教育講演 8 分子病理画像と症候

分子イメージングのセッション。
東北大学大学岡村信行先生からは、タウイメージング。Lancet Neurolの総説はこちら。死ぬクレインイメージの総説はこちら。J Neurosciの論文はこちら18F-THK5105 PETはこちら。THK-5351 PETを開発。

日本医科大学大学院精神行動医学の大久保善朗先生からは、高齢者うつのアミロイド・タウイメージング。うつによる認知機能障害様状態を仮面認知症と呼ばれていましたが、うつが、アルツハイマー病の前駆症状の可能性ありと。こちら

国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター松田博史先生は、Voxel-based morphometry (VBM) 。PSPとCBDのVBMはこちら。病理診断例でVBMの有用性が提示されました。

滋賀医科大学分子神経科学研究センター椎野顯彦先生からは、MRS。MCIのMRSはこちら

福井県立大学米田誠先生からは、62Cu-ATSM PETによるミトコンドリア機能イメージング。こちら。MELASの研究はこちら。パーキンソン病はこちら

放射線医学総合研究所分子イメージング研究センターの島田斉先生はタウイメージング。FTDP-17 3R+4R 4R 3R がある。


[O-28] 口演 脳血管障害の診断

滋賀県立成人病センター研究所山内浩先生からは、15O-gas PETによる貧困灌流と血圧管理について。5年のフォローアップ。貧困灌流がある場合は、収縮期130mmHg以下で再発多くなると。特に発症2年以内は要注意と。テーラーメイド医療では、遺伝子のみならず、画像を含めたバイオマーカーによる治療戦略が必要ということです。

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