第83回日本医科大学医学会総会

日本医科大学橘桜会館において、第83回日本医科大学医学会総会が開催されました。
新任寄附講座教授特別講演として、大脳基底核についてお話ししました。

 大脳基底核は、線条体(尾状核・被殻)・淡蒼球(外節・内節)・黒質(緻密部・網様部)・視床下核で構成される神経核群です。運動系・眼球運動系・前頭前野系・辺縁系の回路が存在し、大脳皮質領野の活動を制御しています。例えば運動系では、前頭葉皮質からの信号がハイパー直接路を介して視床下核を興奮させ運動発現を準備、次に直接路の信号が視床の限局的な脱抑制を起こし運動を惹起、最後に間接路が周辺領域の不要な運動を抑制し運動を終了します。この仕組みに障害がある疾患の代表が、パーキンソン病です。
 パーキンソン病では、線条体においてドパミン分泌が減少します。私たちは、未治療のパーキンソン病において、線条体のシグマ1受容体アデノシンA2A受容体がパーキンソニズムの左右差を是正する方向で変化していることを見出しました。また、アデノシンA2A受容体はパーキンソン病の治療開始後に増加し、特にジスキネジアを有する患者で顕著でした。
 様々な神経系が関与する大脳基底核は、一部にダメージを受けても、回路への影響を最小限にするための様々な代償機能が存在します。私たち神経内科医の薬物治療は、障害の改善が目的ですが、時に神経系のバランスに悪影響を及ぼし、副作用として表出されます。したがって、大脳基底核回路など脳内神経系をさらに研究し、生体が作り上げた絶妙なバランスを保ちつつ治療できるよう、さらなる研究が必要です。

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