眠れる再生力を呼びさませ~脳梗塞・心筋梗塞治療への挑戦~

 NHKで放送された、眠れる再生力を呼びさませ~脳梗塞・心筋梗塞治療への挑戦~を見ました。それなりの大きさの梗塞で、強い麻痺が残ってもやむを得ないような病巣でしたが、自力歩行可能な状態で退院されていました。
 札幌医科大学付属病院脳神経外科の方法は、骨髄を採取し、その中の骨髄幹細胞を静脈投与するもので、骨髄幹細胞を分離・培養する技術があれば可能です。保険診療として認可されるようになるまでになればと思います。抗血小板剤など血が固まりにくくする治療を行う急性期脳梗塞治療のどのタイミングで骨髄採取を行うのか、骨髄採取のリスク、治療後の副作用など、クリアしなければならない問題も多数あるでしょうが。
 私は高校生の頃に読んだ脳の本で脳の機能局在を知り、脳が破壊されても、その機能を担うモジュールみたいなものを移植できれば治るのでは、と勝手な想像をしていました。その後、神経内科の道に入り、当時「脳は治らない」と考えられていましたが、大山雅史先生の論文がStrokeに掲載、脳梗塞で失語を来した患者で、左にあった言語野が右にシフトした様子をPETで証明されました。この論文はリハビリテーションの効果を証明するもので、今でも多数の論文で引用されています。私も、GABA系が脳の機能局在形成に関与する可能性を示唆する論文を書きました。私たちのチームは脳の可塑性について研究してきたわけですが、ついに、これが治療に応用される可能性がでてきたわけです。
 私どもの脳神経センターでは、軽症の脳梗塞でも、重症の脳梗塞と同様(むしろそれ以上)の治療とリハビリテーションが必要と考えています。軽症の脳梗塞では、ご自宅で生活が可能になる方も多いですが、ちょっとした後遺症で職場復帰できないこともあります。また、中には20〜40%は進行性の経過をとり、入院当初より麻痺が強くなることもあります。だからこそ、軽症例こそ専門機関できちんとした治療が必要と考えています。今回の再生医療も、軽症例にこそ効果があるのではないかと想像しています。
 番組でちょっと残念だったのが、出てきたコンピュータグラフィックで、内頚動脈と分離した外頚動脈と思われる血管が、椎骨動脈となって脳幹部の方に行っていたことです...

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