認知症国際フォーラム:午後の部

認知症国際フォーラムの午後の部は、地域の認知症診療についてです。
 日本医科大学武蔵小杉病院内科北村伸先生からは、街ぐるみ認知症相談センターの試みをご紹介いただきました。タッチパネル式のコンピュータによるもの忘れチェックシステムがあるそうです。相談は無料、文部科学省と川崎市からの援助があるそうです。老人会から始まって、医師会・ボランティアグループ・地域包括支援センターなどとの連携も構築されたそうです。
 その後は劇団SOSによる認知症患者を地域で支える寸劇が披露されました。素人の役者ということでしたが、ユーモアたっぷりで、しかし認知症の徘徊に対処する方法がよくわかる劇でした。笑いも起こっていましたが、現場を知っている人たちには笑えなかったと思います。徘徊については、近隣住民の力は大きいです。劇による啓発活動は期待できます。愛犬を散歩につれて行く方による、ワンワンパトロールも興味ある試みです。
 グループホームふぁみりえの大谷るみ子さんから、街ぐるみの徘徊模擬訓練や小中学校での出前絵本教室など、大牟田市の事例が紹介されました。
 スウェーデンのシルビアホームWilhelmina Hoffman先生からは、スエーデンの国家ぐるみの取り組みが紹介されました。シルビアホームについては、こちらに詳しく書いてありましたスウェーデン認知症センターが情報発信に重要な役割を担っているようです。
 ベルギーのヘールOPZリハビリテーションのLieve Van de Walle先生から、ヘールにおけるfoster parent(里親のようなもの)による精神疾患患者のケアシステムの紹介がありました。ネットで調べたところでは、ここが詳しいですが英語です。WHOが「最も伝統あるコミュニティ型精神衛生プログラムが実施されている街」と紹介したこともある事例ですが、ベルギーでもここだけのシステムで、国からの援助もなく、病院が赤字を埋め合わせているそうです。foster parentの報酬は1日たった18€。700年も続くこのシステムのきっかけは、悲しい伝説でした。ハイビジョンでその様子を見せていただきましたが、精神疾患の方で落ち着いた状態ですと、このシステムは有効でしょう。アルツハイマー病のような進行性の疾患ではどうでしょうか。また、日本に導入するにはなかなかハードルが高そうです...
 さて、このフォーラムは認知症を対象にしていたわけですが、脳卒中地域連携パスにも応用できると思います。特に、回復期でのリハビリテーションを終えてご自宅に帰った場合、支援するシステム作りは重要です。急性期は2週間、回復期は1〜3ヶ月、その後の療養期の方が圧倒的に長期です。家族が疲弊してしまう事例も多々経験します。福祉や介護施設をどう利用したらよいか、相談するところがあるといいです。北村先生の街ぐるみ認知症相談センターのようなものが、脳卒中地域連携パスのなかにもあるといいですね。また、以前書いたように、佐倉市で在宅医療を支援するシステム作りが始まりつつあるそうなので、期待しましょう。

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