後ろ向き研究による実態調査(SCADS-I)前向き観察研究(SCADS-II)研究成果報告会

大阪の千里ライフサイエンスセンターで開催された、循環器病研究委託費 18公-5「脳血管解離の病態と治療法の開発(SCADS-Japan)」後ろ向き研究による実態調査(SCADS-I)前向き観察研究(SCADS-II)研究成果報告会に参加しました。詳細は、脳卒中学会など今後の学会や、論文で明らかになるようです。
 画像診断については、この研究会を通じて進歩しました。脳血管撮影でのintimal flapまたはdouble lumen、MRI T1WIでのintimal hematomaが診断確実、教科書的には有名なpearl and string signは、動脈硬化やSAH後のspasmとの鑑別が難しいので解離疑い、ということでした。
 内科治療に関しては、頭蓋内の解離性動脈瘤の虚血発症で抗血小板剤や抗凝固剤を使用するケースが意外と多かったようです。しかし、瘤の形成がある場合には、症状や画像上悪化した症例がいくつかあったようです。狭窄がある場合は、抗血栓療法を行わない場合も行った場合も悪化した症例があったとのことでした。瘤形成も狭窄もない場合は、抗血栓療法はやらない方がよかったようです。日本で頭蓋内の解離に対して、抗血栓療法を行う施設が多いのは、欧米に多い頭蓋外の解離に対して行う抗血栓療法のエビデンスに引っ張られたのではないかとのご意見がありました。日本医科大学千葉北総病院脳神経センターでは、頭蓋内の解離に対しては基本的に抗血栓療法は行っていませんでした。瘤の形成がなく狭窄があるケースでは、抗血栓療法も考慮してもいい場合があるということです(ただしエビデンスレベルは低いので慎重に)。もちろん頭蓋外では抗血栓療法を必ず考慮すべきです。
 手術療法は、症例数が多くないため確定的なことをいうのは困難だったということでした。
 血管内手術では、今は塞栓術が中心、将来は自己拡張型のステントが出てくるようです。

 脳動脈解離による脳梗塞の治療は、これまでエビデンスが乏しく現場では経験に頼っていたのですが、今回の研究報告で、もやもやが吹っ切れたような気がします。まだ中間報告の段階なので、今後の論文に期待しましょう。

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