第9回オザグレル学術講演会

 東京ガーデンパレスで開催された、第9回オザグレル学術講演会に参加しました。
 東京都済生会中央病院の足立智英先生からは脳卒中データバンクにおけるオザグレルの使用状況についての講演がありました。重症例でオザグレルとアルガトロバンを併用する傾向にあるということですが、このデータは、投与時期が不明なため、重症化したから投与開始したのか、初療時から投与していたのかはわからないそうです。
 日本医科大学神谷信雄先生からは、自身の骨髄単核球細胞移植についての研究が紹介されました。MRIの造影剤超常磁性酸化鉄(superparamagnetic iron oxide particles, SPIO)を応用して、細胞が梗塞巣近くに遊走している様子も証明されていました。論文が待たれます。
 札幌医科大学本望修先生からは、体性幹細胞による脳梗塞治療の講演がありました。2007年のNHKの番組は衝撃的でしたが、MRIのFLAIR画像の病巣が投与翌日に縮小傾向にあったと開設されたコンソール画像には懐疑的に思っておりました。しかし、今日経時的に撮影されたものを並べていただき、確かに縮小したことがよくわかりました。テレビでは、このような画像の変化は向かないんでしょうか。それにしても、全麻痺の状態が投与翌日には動きだす、それも急性期ではなく慢性期に効果があるのは画期的です。骨髄間葉系幹細胞が病巣に遊走して、神経栄養因子などを放出するのが効果の機序として考察されています。ますますリハビリテーションが重要だと思いました。拘縮しては動きませんから。骨髄の細胞のうち1/1000が間葉系幹細胞だそうです。温度・溶液濃度など、極わずかな培養条件の違いで異なる変化をしてしまうそうです。脳梗塞のような劣悪な環境でも幹細胞は生きていられ、BBBを通過して遊走します。ES細胞の移植がteratomaになってしまうことが知られています。しかし、例えば脳表なら軟骨ができるなど、同じ場所には同じものができるとのこと、ES細胞に間違った信号が伝わることでteratomaができてしまうようです。iPS細胞も同じ問題があります。その点、体性幹細胞は常に制御を受けている。体性幹細胞を得るには骨髄穿刺が必要ですし、大規模な細胞調節施設(Cell Processing Center, CPC)も必要です。iPS細胞に正しい信号が伝える技術が期待されます。

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