第7回関東脳核医学研究会

ベルサール九段で開催された、第7回関東脳核医学研究会でDatSCANなどドパミントランスポータ画像について、講演させていただきました。


先日出ました神経内科 Vol. 82 No. 2に該当する内容がいくつかございますので、ご参考にしてください。

Warner HNらのドパミン受容体画像はこちら。Garnett ESらの18F-FDOPA PETはこちら。dopamineのターンオーバーよりドパミントランスポータの方がPD初期のシナプス前機能の低下をとらえやすい。こちら。ドパミントランスポータSPECTのreviewはこちら

DatSCANを用いると、パーキンソン病と本態性振戦の鑑別ができます。しかし、ET-PD syndromeというのもあります。本態性振戦の剖検脳の検討では、一部にレヴィ小体を認めています。こちらこちら。Benign Tremulous Parkinsonismはこちらこちらこちら。家族性パーキンソン病では複数の遺伝子や病態がわかってきました。こちらをご参照。孤発性のパーキンソン病もheterogenousな疾患と考えられます。つまり、初期に本態性振戦と診断されても、後にパーキンソン病に移行することもある。パーキンソン病自身もバリエーションがある。scans without evidence of dopamine deficiency(SWEDD)というのもある。臨床診断も画像診断も単純に分けられない場合があるのです。典型的な症例ではDatSCANによる鑑別は容易ですが、DatSCANなしでも容易...

SWEDDは、L-DOPAやドパミンアゴニストの臨床試験において18F-FDOPA PETやDatSCANが導入された結果、臨床診断でパーキンソン病と診断されたにも関わらず、DatSCANで異常のない症例が 5~20 %程度あることがわかり注目されるようになった病態。こちらこちらこちら。瀬川病についてはこちら。ドパミン生合成経路の障害で、黒質ドパミン神経細胞自体の変性はないので、DatSCAN正常。しかし頻度は少ないはずで、SWEDD全部を説明できないと思われます。そこでdystonic tremorという概念がでてきました。こちら。本態性振戦の亜型とも考えられています。しかし、SWEDDの長期フォローアップ例の中には、後にDatSCANが低下する例が報告。こちら。REAL-PET studyでSWEDDだった症例で家族性パーキンソン病が見つかった。こちらに記載あり。ということで、SWEDDも複数の病態が混入していて、パーキンソン病例もありうるのかもしれません。今のところ、DatSCANのみで結論を出してはいけない…

アルツハイマー病とレヴィ小体型認知症の鑑別はこちら。多施設共同研究はこちら

パーキンソン病の進行についてはこちら。脳内のドパミンは20歳頃をピークに減少、その20%以下まで減少するとパーキンソン病を発症すると言われています。つまり、パーキンソン病が発症しているときはすでにそこそこドパミン分泌は低下、発症前にもドパミン神経細胞の減少が始まっているということです。こちらをご参照ください。

DatSCANの半定量法はいろいろあります。Tossici-Bolt法はこちら

specific binding ratio(SBR)は、

SBR = cs / cr
   cs: 特異的結合濃度
   cr: 非特異的結合濃度 =(全脳VOI総カウント - 線条体VOI総カウント) /(全脳VOI容積 - 線条体VOI容積)

線条体VOI総カウントは以下の式に。
CtVOI = Cts + Ctns
  CtVOI : 線条体VOI総カウント
  Cts : VOI内の特異的結合カウント
  Ctns: VOI内の非特異的結合カウント

VOI内の非特異的結合カウントは、非特異的結合濃度を線条体VOI容積をかけたもの。
Ctns = cr × VVOI
  VVOI: 線条体VOI容積

∴ Cts = CtVOI − cr × VVOI

線条体の実容積 Vs がわかる場合は、線条体の特異的結合濃度 cs を求めることができる。
cs = Cts ∕ Vs

∴ SBR = cs / cr
= Cts ∕(Vs× cr)

=(CtVOI − cr × VVOI)∕(Vs× cr)

=(CtVOI∕cr − VVOI)∕ Vs

ということで、手動で円形ROIを置くのと異なり大きなROI内の総カウントを使うので、部分容積効果はない。

しかし、以下の図のような状態では、台形ROI内に非特異的カウントがない脳溝・脳室が入る。そうすると、特異結合カウントの山を切り崩すことになる。あるいは、非特異的結合濃度を測定するための全脳ROI内に脳溝・脳室が入ると低くなる。この辺が誤差要因になります。また、線条体容積Vsも固定して計算していると、これも誤差要因。


ということで、まとめるつもりが、混沌とした状況を提示することになってしまいました...

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