君津中央病院院内講演会

 君津中央病院にお招きいただき、脳卒中診療におけるドクターヘリと題した講演をしました。君津中央病院には、2009年1月に救急医療用ヘリコプター、いわゆるドクターヘリが千葉県2機目として配備されます。私の講演内容は、
熊谷智昭、三品雅洋、武井健吉ら:千葉県における脳卒中診療での救急医療用ヘリコプターの利用状況。脳卒中 30(4)、545-550、2008
をご参照ください(別刷りのリクエストはmishina@nms.ac.jpまで)。
 日本医科大学千葉北総病院救命救急センター長益子邦洋先生からは、ドクターヘリの現状と展望についての講演がありました。1995年1月17日の阪神・淡路大震災、私たちは朝のニュースを通じて悲惨な状況を知るわけですが、その惨事は報道各社のヘリコプターからの映像でした。自衛隊のヘリコプターは大量の救援物資を運びました。消防ヘリコプターは火災の鎮火を担いました。しかし、被災した負傷者をヘリコプターで搬送した数は、1月17日はたったお一人、翌日も数名と、非常に少なかったそうです。ほとんどの負傷者は、現地の病院に搬送されていたのです。しかし、病院も被災し地震によりライフラインが断たれていたわけで、病院としての機能も対応できる状態ではなかったわけです。一方1998年6月3日、ドイツの高速列車ICEで大事故が発生しました。死者101人。このときは、周辺地区からの救急車の他、ドクターヘリも30機以上集結、全国の基幹病院に3名以上集中しないように搬送され、2時間で全搬送が終了したそうです。当時ドイツにはアウトバーンなどでの交通事故死を減らすためにドクターヘリの配備が進んでいて、日常的に運用されていました。大規模災害のときにドクターヘリを活用するには、日常的な運用が重要だとのことでした。
 外傷の搬送ではドクターヘリは非常に有用であることがよくわかりました。
 脳卒中診療ではどうでしょうか。確かにアルテプラーゼ投与による血栓溶解療法の場合、できるだけ早い搬送と治療開始が望まれます。しかし私たちの調査では、救急要請の遅延など、搬送そのもの以外の要因で血栓溶解療法ができないケースが多く、ドクターヘリですべてが解決するわけではないことも明らかになりました。千葉県は医師不足が深刻化、急性期病院以降の体制、例えば回復期リハビリテーション病院の数も全国一少ない状況です。急性期病院にしても、3次救急には重症例が搬送され、血栓溶解療法ができない例も多くなりますから、軽症〜中等度が搬送される2次救急で行うべき治療法とも言えます。都内でMRIなどを駆使して治療成績がいい荏原病院がいい例です。しかし千葉県内の2次救急病院はやはりman power不足、24時間365日血栓溶解療法ができる2次救急病院はごく一部。体制が整うまではドクターヘリを駆使して専門施設への搬送ということになるでしょうが、千葉県内の医療は解決すべき問題が山積しています...
 ともかく、200km/hrで巡航するドクターヘリ、半径50kmが15分圏内となり、君津中央病院が基地病院に加わると、千葉県全域が15分圏内の円で埋まることになります。今後の活躍を期待しましょう。

 コードブルーは、2009年1月に特番があるそうです。

 ドクターヘリ関連資料は、HEM-Net川崎医大のサイトが詳しいです。千葉県の現状については、もちろん日本医科大学千葉北総病院のサイトをどうぞ。

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