あおぞら診療所


 7月10日と本日、あおぞら診療所を見学しました。最近新松戸中央総合病院でご一緒している、松戸朋友クリニックの大木剛先生にご紹介いただいたのでした。
 千葉県共用の脳卒中地域連携パスでは、急性期病院・回復期リハビリテーション病院だけでなく、地域生活期(維持期)の役割が重要視されています。しかし、ワーキンググループの班員にも関わらず、私自身介護や在宅医療の現場を全く知らないので、勉強させていただいた次第です。
 往診は、病院にいらっしゃれない方のための外来、というより、病棟の方が近い印象です。川越正平院長のお話では、あおぞら診療所だけでは看護師は足らず、8つの訪問看護ステーションと連携しているそうです。しかし、往診と訪問看護は同日ではないため、処方変更などの情報を共有しなければなりません。しかも、あおぞら診療所と訪問看護ステーションは経営母体も違いますから、共通のカルテを使っているわけでもありません。そのためカンファレンスが必須です。千葉県共用パスでは、介護スタッフが医療機関に問い合わせするための、「連絡票」を作りました。しかし、看護師や介護スタッフが、医師の診療に対して批判とも取られかねない意見を、書類で伝達できるか? やはり、顔を合わせていれば、気楽に質問ができる。ケアマネージャーとの会議も効率よく実施されています。時間をずらして、一人のケアマネージャーと各主治医が面談するようです。先日の千葉県地域連携の会でも議論されましたが、脳卒中地域連携パスのためのシートが重要なのではなく、連携のシステムが大事なのです。
 書式に関して言うと、あおぞら診療所オリジナルのカルテがすばらしかったです。県共用パスと共通の部分もたくさんありましたが、家の見取り図、急変時の依頼先、前医とのトラブルなども記載。チェックシートよりも具体的な文章の方が読みやすい。また、誕生日月にはサマリーを書くことになっていて、脳卒中のような長期の経過になる方では便利です。
 癌末期の緩和ケアに関するツールとして、緩和ケア普及のための地域プロジェクト(OPTIM)を教えていただきました。「わたしのカルテ」は、まさに今回の県共用パスのコンセプト、患者さんが所有するパスです。しかも、疼痛・嘔気・息切れなどの症状に対してどうすればよいか、患者さんにわかるよう具体的な対処法が記載されています。ご自宅でお看取りすることをご希望の場合、医療関係者以外では初めての体験となる患者の変化についても、わかりやすいパンフレットが用意されていました。患者にパスをお持ちいただくなら、ここまで具体的にわかりやすいシート・パンフレットにしないといけませんね。
 在宅医療の現場には、真の神経内科専門医の介入が必要なこともわかりました。私のようないんちき神経内科医はMRI・PETなど高額な医療機器を使って診断しているわけですが(似たようなことは、水野美邦先生との講演会のことでも書きました...)、往診ではCT・MRIがすぐできるわけではない。診察のみである程度の診断・治療ができる必要があるのです。
 などなど、在宅医療の可能性について、勉強になりました。ここに記載していない事項も、今後出る総説などに反映させたいと思っております。また、脳卒中地域連携パスの新たな課題も出てきました。

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