医療連携を推進する会2

 続いて、熊本市民病院橋本先生のご講演でした。
脳卒中は当日〜翌日でoutcomeが決まる
 熊本のクリニカルパスは、疾患別ではなく、FIMなどで区分した重症度によって分類されたパスをご使用です。急性期病院は、例えばラクナ梗塞のパスというように、疾患ごとに分けることが多いです。しかし、次のステップである回復期は、疾患を治すのではなく、障害を治すわけで、土俵が違う。さらに追加すると、療養期は生活が対象になる。今私はラクナ梗塞のクリニカルパスを作成中、ちょっと考え直す必要が...
重度障害でもリハビリテーションのチャンスを
 2〜3ヶ月は回復する可能性があるわけで、リハビリテーションに乗りそうもないと最初から療養型に送るのではなく、回復期施設がいいだろうとのことです。私たちはこのような場合に特殊疾患病棟を持つ施設に送るルートを作りました。でもその前に、リハビリテーションをすべきということです。ただし、同じ病院に続けて何人も送ってしまうと、結局その病院の回転が遅くなります。なぜなら、急性期病院は全病室に酸素のコンセントがありますが、リハビリテーション病院ではそうではないからです。その部屋が空かないと、次の重症者は受け入れられない。だから、重症者は一カ所に集中しないように、分散させるようにしたほうがいいとのことでした。
脳卒中地域連携パスはどこが作るべきか
 私たちの印旛脳卒中地域連携パスは、日本医科大学千葉北総病院脳神経センターと新八千代病院が中心になって始めたものです。新八千代病院は当時すでに千葉脳神経外科と連携パスを作成していて、それぞれが治療のクリニカルパスがあり、それをそのまま使用していました。私たちは連携パスは急性期〜回復期〜療養期を1枚の紙にすることを考えていましたが、それぞれ別な紙とし、後で統合するシステムとしました。急性期の部分は私たち急性期病院で作成しました。
 しかし、橋本先生は回復期が作るべきとおっしゃいます。例えば急性期病院からの診療情報提供書、こういう風に診断して、こう治療して、肺炎になっても何とか治して...と、自慢話の羅列です。しかし回復期はどういう情報が欲しいのか、麻痺の程度、食事形態、発語、排泄、患者さんの障害の程度を知りたいのです。これらの事項は私たちの紹介状では抜けがちです。回復期が必要な情報を提供するのが地域連携パスの目的です。だから、急性期が作るのではなく、回復期が作成するのだ、というのが橋本先生の主張です。で、後は話し合いで変えていくわけです。
脳卒中地域連携パスの統合化の必要性
 私たちの地域は結局連携パスが連立している状態です。しかし、これは回復期リハビリテーション病院に大変な迷惑がかかります。それぞれ違ったフォーマットを使用しなければならないし、連携パスに義務づけられている年3回の会議は、連携パスが増えれば3倍の会議に出席しなければなりません。やはり、千葉県も統一したパスを作成すべきです。まだ詳しくはお伝えできませんが、動き出します。
 "流れ"を作ってしまえ、とのことでした。東京都がそうです。某大学が他施設との話し合いもせず脳卒中地域連携パスのドラフトを作成、これを使う施設はどうぞ、と立ち上げました。他にも施設同士で話し合いながら作り上げた連携パスがあったのですが、後から出て来た某大学パスが主流になってしまったようです。でもそれでもいいのです、後で話し合いして変えて行けばいいのです。
脳卒中地域連携パスの会議をいかに実施するか
 熊本の脳卒中地域連携パスの会議は、700人くらい集まる大規模なもので、そうなると、1年以上前から予定を決めておかないと会場の確保もできないとか。私たちの先日の会議は120人規模、しかし、discussionはほとんどできませんでした。橋本先生からヒントをいただきました。まず、事前に世話人会を開催し、問題点を持ち寄って議題を決めておく、世話人会には看護師やリハビリ・薬剤師の代表も入れる、ということです。事前の根回しもしておかないと、まとまるものもまとまりません。それから、看護部・リハビリ・急性期病院などの分科会も事前に実施するといいだろうとのことです。
ITがからむと仕事が遅くなる
 これは講演で出てきたお話ではなく、そのあとの懇親会で聞いたお話です。ITは便利な面もあるが、紙にチェックするよりは時間がかかり、特に疲弊している急性期病院では定着しないとのことです。Excelで作成した某地域、年間20例くらいしか連携パスが使用されなかったそうです。私たちも、院内LANとFileMakerを使って、パスを印刷してお渡しする方法を取っています。しかし、実際に入力する脳外科医にアンケートすると、9人中8人が「連携パスやめたい。」とおっしゃいます。私は苦労して簡単に入力できるよう工夫したつもりでしたが、印刷された紙にチェックするのと比べると、PCにログイン、データベースにログイン、カルテを見ながら、足らなければ患者さんのところに行ってチェック... それよりは、印刷して回診中にでもチェックした方が簡単かなあ、と思い直してます。でき上がったコピーを見ながら、私が入力すれば集計もできます。
 インターネットで私たちのデータベースと他施設をつなぐとセキュリティの問題がでてしまうので、専用線が必要かなあとも思っていたのですが、かえって手間がかかり普及しないことになりかねません。ある地域では試験的に専用線で結んだ連携の試みをしているそうですが、現場の人たちは「実験台だから仕方がない...」と、大変な思いをされているとか。

コメント

このブログの人気の投稿

認知症診療セミナー