松下政経塾フォーラム「日本の医療 これからの30年」


 東京ステーションコンファレンスで開催された、松下政経塾フォーラム「日本の医療 これからの30年」に行きました。
 松下政経塾の高橋宏和先生の企画です。
 まずは創設者松下幸之助さんのDVD。塾は何でも教えるのではなく、自修自得。丁寧に教える鍛冶屋は、上手な人をたくさん作るが、名人は出ない。なかなか教えてくれない頑固な鍛冶屋では、多くの人は長続きせずやめていき、1人か2人しか残らない。10年くらい掃除など雑用をやって、やっと教えてくれる。こちらからは名人が出る。宮本武蔵に師はいなかった。自分自身で自分の腕を磨き、剣聖になった。これが松下政経塾の精神だそうです。今の医学教育はどうでしょう。Objective Structured Clinical Examination(OSCE)のように診療の仕方も学生のうちにテスト、DVDもあるし、国家試験の塾があったり。日本は医師不足、名人より上手な人がたくさん必要なのです。でも現場に出た時、教科書通りの症例ばかりではないし、最先端に行けば誰も見たことがない世界だし、自修自得の精神は必ず必要です。
 基調講演は早川一光先生でした。富士山を見て感動せよ。終戦で価値観が180°変わる中、マインドコントロールではなく、自治と自律。「自分の体は自分で守る」。患者の治癒力が治すのであり、医師はそのお手伝いをしているだけ。医者は大学医学部が作り、医師は住民が作る。
 次に高橋先生の研修終了報告。先生は千葉大神経内科のご出身、千葉県は銚子市立病院に象徴されるように、医療が厳しい地域です。県立柏原病院の小児科を守る会のように、住民が救った医療もあります。日本は医療費が諸外国よりGDP比で少ない訳ですが、他国はどうか。ドイツもフランスもイギリスも、医療費の高騰と高齢化の問題がある。高負担高福祉の北欧も、日本とは違い、ご高齢の認知症患者に胃瘻を造設したりはしません。イギリスは50歳以上の透析はしない。NICEが限られた医療財政を仕切っている。で、高橋先生は、「必要な人が必要なだけ取り、不要な人は利用せずに済むことを感謝」の社会福祉を提唱されました。
 パネルディスカッションでは、まずMVCメディカルベンチャー会議の武蔵国弘先生から、ITの役割についてお話がありました。情報・意識・施設・医療費・ヒト・医療文化の共有を、インターネットが担う。電子カルテは医療費を削減しないが、クラウドコンピューティングなどで共通のシステムを作り情報を共有できれば、削減できる。
 メディファーム株式会社の裴英洙先生からは、経営のお話。現場に入り込むハンズオンにより、経営者側に提言をするそうです。利用者が求めるサービスと、医療者が提供するサービスが異なる。医療者側がそれに気づいていない。
 筑波大学阪本直人先生からは、教育体制が医師確保につながることを強調されました。かつて大学医局が担っていた医師派遣機能が崩壊、地方の医療が崩壊していった訳です。しかし、派遣を強制されて、医師がその地域に定着する訳ではない。地域の医師を地域が育てることにより、継続する。

 日本の医療の30年、明るい話がでてきませんでしたね。どうしたらいいのでしょうか。国民はどうしたいのでしょうか。ある種の覚悟がいると思いますが。

 今回、ICレコーダーにSONY ICD-SX813を使ってみました。医局にあったSX850よりも音がクリアに取れています。2月12日の千葉県脳卒中連携の会で、活躍してもらいましょう。iPod touchの音声メモも試してみました。こちらもなかなか。

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