第471回日本医科大学医学特別講演会

Cerebrovascular Center,Cleveland Clinic Lerner College of Medicine of Case Western Reserve Universityの内野研先生をお招きして、脳卒中急性期治療の診療体制についてのご講演をいただきました。




Cleveland Clinicは米国オハイオ州クリーブランド市を本拠地とする米国屈指の医療機関である。脳卒中は地域の半数を担い、脳梗塞は年間500例以上が入院する(関連病院も含む)。直接の救急搬送が12%、自家用車での来院が13%であり、75%は他院からの紹介が占める。例えば、rtPA静注は他院で実施されたのちに転送されるdrip and shipが95例、救急部門に搬送された患者での19例をはるかに凌ぐ(2013年)。この連携に重要な役割を担っているのがtelemedicineである。周辺の医療機関に搬送された脳卒中患者について、診療医はCleveland Clinicの脳卒中専門医に相談し治療の助言を得る。その際専門医はtelemedicineにより、CT画像・血液データを見るだけでなく、患者を問診・観察することもできる。血管内治療など特殊な治療が必要と判断された場合はCleveland Clinicに転送となる。
脳卒中治療は時間が勝負。米国ではJoint Commissionなどの認証機関により1,505の脳卒中センターが認定された(2013年12月)。診療体制の改善でrtPA静注療法実施率は増加した(Schwamm et al, 2013、Willeit et al, 2014)。Cleveland Clinic内でも、院内の体制改善により救急搬送から治療開始までの時間(door to needle time, DNT)60分以内の症例が増加した。さらにDNTを短縮するため始まったのが、Mobile Stroke Treatment Unitである。
Mobile Stroke Treatment Unitは、頭部専用CT、採血検査機器を有する救急車と、看護師・放射線技師を含む4例が、救急要請とともに現場に向かうものである。ここでもtelemedicineを用いて医師が診療に参加、救急車に医師は同乗しない。専門医の判断により現場でrtPA静注を実施、近くの医療機関に搬送、特殊治療を要する場合はCleveland Clinicに搬送される。これにより、DNTは平均約60分から30分に短縮された。
東京都は消防庁を中心とした脳卒中の救急搬送システムが整っている。しかし、さらにDNTを短縮させるためには、telemedicineなどの新システムの導入も視野に入れるべきであろう。講演後の質疑応答も活発に行われ、大変有意義な講演であった。


感謝状贈呈です。

質疑応答の延長戦

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