第13回「脳梗塞フォーラム」研究集会
新宿のヒルトン東京で開催された、第13回「脳梗塞フォーラム」研究集会に参加しました。当番世話人の日本医科大学片山泰朗先生のお話では、本邦で2005年の承認以来約4,000例にアルテプラーゼによる血栓溶解療法が実施されているそうです。しかしこれは急性期脳梗塞患者の約2.5%にすぎず、3時間以内の来院に限っても9.3%にすぎないそうです。この研究会は、rt-PAの話題です。
日本医科大学大久保誠二先生からは、エダラボンとアルテプラーゼの併用療法についての講演がありました。ラットのMCA閉塞モデルで、エダラボン併用による梗塞巣の縮小と、therapeutic time windowの延長を確認されました。埼玉医大棚橋先生からエダラボンとtPAの相乗効果についての質問がございました。私の意見はこうです。ラジカルはTNF-αを惹起し、PAI-1を増加させますが、PAI-1はt-PAと結合してtPA-PAI1複合体を作ります。したがって、ラジカルを減少させるラジカルスカベンジャーは、ラジカルによるt-PAの減少を抑制するのではないかと思っています。詳細はこちらの論文をご覧ください。だから私たちの施設では、アルテプラーゼ投与待機中(採血の結果待ち)に、エダラボンを流しておきます。
日本医科大学桂研一郎先生からは、脳卒中急性期における脳保護療法についてのレビューがありました。これまで動物実験では数々の脳保護薬の有効性が証明されていますが、臨床治験はエダラボン以外は失敗に終わっています。最近桂先生や日本医科大学老人病研究所が行った水素の酸化ストレス抑制作用は注目されます。Nature Medicineの論文はこちら。
国立循環器病センター峰松一夫先生からは、rt-PA治療の現状と今後の展望についてのお話がありました。アルテプラーゼの市販後調査では、本邦においては比較的安全に実施されていること、現在MRI画像診断の研究が終了していることが示されました。日本での実施率が低いということですが、国内では特にStroke Care Unitを有する施設を中心に実施されているとのことです。そして、4年間で1例もアルテプラーゼが使用されていない医療圏がいまだに存在し、医療格差を問題視されました。ということで、脳卒中協会などが中心になって活動されている、脳卒中対策基本法の実現が重要であるとのことです。適正治療指針の改訂を予定しているということです。日本では適応基準がきちんと守られ実施されていますが、欧米では、CT室で画像診断直後にrt-PA静注する場合もあるらしく、そうすると病院到着30分以内に実施できるらしいです。この辺は医療文化の違いで、薬品の添付文書より、治療ガイドラインが優先、医師の判断も尊重されるそうです。私の病院では、CT開始に10分くらいしかかかりませんが、禁忌事項をスクリーニングするための採血結果を待つ必要があるため、最短でも40分くらいです。この採血を省略して実施できるようになると血栓溶解療法の成功率も上がると思うのですが、例えば血小板数が10万以下では出血が多くなるなど、安全に実施するには省略できないでしょうね。最後の方のスライドでは、これら急性期医療を効率的に実施するためには医療連携の重要性を示されました。印旛脳卒中地域連携パス(InCliPS)もよろしくお願いいたします。
それにしても、これからdesmoteplaseなど次世代の薬品やMERCIやPenumbra Clot Retrieval Deviceなど血管内ディバイスが日本で使えるようになるのは、欧米や韓国・中国などよりどのくらい遅れるのでしょうか。
日本医科大学大久保誠二先生からは、エダラボンとアルテプラーゼの併用療法についての講演がありました。ラットのMCA閉塞モデルで、エダラボン併用による梗塞巣の縮小と、therapeutic time windowの延長を確認されました。埼玉医大棚橋先生からエダラボンとtPAの相乗効果についての質問がございました。私の意見はこうです。ラジカルはTNF-αを惹起し、PAI-1を増加させますが、PAI-1はt-PAと結合してtPA-PAI1複合体を作ります。したがって、ラジカルを減少させるラジカルスカベンジャーは、ラジカルによるt-PAの減少を抑制するのではないかと思っています。詳細はこちらの論文をご覧ください。だから私たちの施設では、アルテプラーゼ投与待機中(採血の結果待ち)に、エダラボンを流しておきます。
日本医科大学桂研一郎先生からは、脳卒中急性期における脳保護療法についてのレビューがありました。これまで動物実験では数々の脳保護薬の有効性が証明されていますが、臨床治験はエダラボン以外は失敗に終わっています。最近桂先生や日本医科大学老人病研究所が行った水素の酸化ストレス抑制作用は注目されます。Nature Medicineの論文はこちら。
国立循環器病センター峰松一夫先生からは、rt-PA治療の現状と今後の展望についてのお話がありました。アルテプラーゼの市販後調査では、本邦においては比較的安全に実施されていること、現在MRI画像診断の研究が終了していることが示されました。日本での実施率が低いということですが、国内では特にStroke Care Unitを有する施設を中心に実施されているとのことです。そして、4年間で1例もアルテプラーゼが使用されていない医療圏がいまだに存在し、医療格差を問題視されました。ということで、脳卒中協会などが中心になって活動されている、脳卒中対策基本法の実現が重要であるとのことです。適正治療指針の改訂を予定しているということです。日本では適応基準がきちんと守られ実施されていますが、欧米では、CT室で画像診断直後にrt-PA静注する場合もあるらしく、そうすると病院到着30分以内に実施できるらしいです。この辺は医療文化の違いで、薬品の添付文書より、治療ガイドラインが優先、医師の判断も尊重されるそうです。私の病院では、CT開始に10分くらいしかかかりませんが、禁忌事項をスクリーニングするための採血結果を待つ必要があるため、最短でも40分くらいです。この採血を省略して実施できるようになると血栓溶解療法の成功率も上がると思うのですが、例えば血小板数が10万以下では出血が多くなるなど、安全に実施するには省略できないでしょうね。最後の方のスライドでは、これら急性期医療を効率的に実施するためには医療連携の重要性を示されました。印旛脳卒中地域連携パス(InCliPS)もよろしくお願いいたします。
それにしても、これからdesmoteplaseなど次世代の薬品やMERCIやPenumbra Clot Retrieval Deviceなど血管内ディバイスが日本で使えるようになるのは、欧米や韓国・中国などよりどのくらい遅れるのでしょうか。
コメント
2段落目の7行目の『こちらの論文』に興味があるのですが、タイトルなど、お教えいただけませんでしょうか?誠に申し訳ないのですが、何卒宜しくお願い申し上げます。
いつのまにかリンクが切れておりました。ご指摘ありがとうございます。リンクを修正いたしました。論文は以下の通りでございます。
Masahiro Mishina, et al.: Administration of Free Radical Scavenger Edaravone Associated With Higher Frequency of Hemorrhagic Transformation in Patients With Cardiogenic Embolism. Neurol Med Chir 48(7):292-297,2008