鎌ヶ谷シンポジウム 認知症研究の最前線 第1回

 鎌ヶ谷総合病院で開催された、鎌ヶ谷シンポジウムに参加しました。
 福島県立医科大学の橋本康弘先生からは、正常圧水頭症(iNPH)における髄液の糖タンパク質糖鎖についてのご講演がありました。生体内のタンパク質のほとんどは糖鎖を持っているそうです。付いてないのはアルブミンくらい。腫瘍マーカーのほとんどが糖鎖。髄液中の蛋白では、血清とほぼ同様の糖鎖があるのですが、髄液型の糖鎖も。投稿前ということで詳細は割愛しますが、この糖鎖のひとつが、脈絡叢に多い、それがiNPHでは髄液中で少なかったとのことでした。iNPHの成因に髄液吸収障害説がありますが、その代償として脈絡叢での髄液産生抑制があるとしたら...などと、臨床医に興味をさそう基礎研究で、今後の論文が期待されます。
 東京国際大学の森朋子先生から、鎌ヶ谷総合病院千葉神経何秒医療センター湯浅龍彦先生との共同研究で、iNPHのシャント術後の認知機能評価についての発表がありました。Mini-mental state examination (MMSE)Frontal assessment battery (FAB)Trail making test (TMT)を使用していますが、シャント術後の歩行障害の改善が認めても、認知機能はそうでもなかったとのこと、iNPHでの最適なバッテリーが求められます。
 東京大学古和久朋先生からは、第61回米国神経学会議の中で、とくにAlzheimer's Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)についての最新情報がプレゼンテーションされました。日本でもJ-ADNIが進行中ですが、米国のADNIが先行しています。MCIのうち16.5%がアルツハイマー病にコンバートしたそうです。また、MRIでは、正常加齢で海馬・側頭葉の萎縮が1.2%/年なので、MCIでは2.0%/年、アルツハイマー病では2.5%/年でした。ApoE4アレル保有者では、正常の人でもPiB PET陽性だったとか。所詮免疫染色のようなもので、健常者の病理でも老人斑が認められることもあるように、認知症がない方でPiB PETが陽性だから今後必ずアルツハイマー病になるとは限らない、ということです。J-ADNI代表の岩坪威先生のAβの論文は、
Iwatsubo T et al., Visualization of A42(43) and A40 in senile plaques with end-specific A monoclonals: Evidence that an initially deposited species is A42(43) Neuron, Volume 13, Issue 1, 45-53

 東京医科歯科大学の服部高明先生からは、iNPHの拡散テンソル画像についての研究が紹介されました。
 理化学研究所脳科学総合研究センター宮武正先生より、「アルツハイマー病今後の治療・予防法:"Heparan sulfate and anti-amyloid therapeutic strategies"を中心に」というタイトルで、特別講演がありました。アルツハイマー病の根本治療は、βまたはγセクレターゼを阻害、アミロイドβ(Aβ)を分解するネプリライシンの活性化ワクチン療法、NSAIDが研究されています。アルツハイマー病で脳内に蓄積するAβは、発症する20年以上前から始まっているので、治療を考えると、服用は長期に及ぶことが予想され、副作用が少ない薬が理想とおっしゃいます。例えば、NSAIDでは胃潰瘍が問題になります。heparan sulfateはAβと共存、βセクレターゼを抑制しAβ産生を減らすようです。tramiprosate(Wikipediaではhomotaurine)血中のAβを減少させ、BBBも容易に通過し脳内のAβも減少できるようです。副作用も糖なのでないとのこと。今後の研究の進展が期待されます。アルツハイマー病の予防については、まずcurcuminが紹介されました。カレーのスパイスのひとつ、ウコンに含まれているそうです。以下の論文は、freeでPDFをダウンロードできます。
Yang F, et al., Curcumin inhibits formation of amyloid beta oligomers and fibrils, binds plaques, and reduces amyloid in vivo. J Biol Chem. 2005 Feb 18;280(7):5892-901.
curcuminはアミロイドを減少させるそうです。また、コンゴレッドに似た構造で、老人斑が染まるそうです。また、魚を食べる人はアルツハイマー病が少ないとのこと、DHAが関与?
 途中で、千葉鍼灸学会のご紹介もありました。パーキンソン病治療での鍼灸に注目しています。

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