第50回日本神経学会総会-2

 ランチョンセミナーでは、東北大学内科腎・高血圧・内分泌部門教授の伊藤貞嘉先生の「脳腎関連」を拝聴しました。伊藤先生の最近のreviewがフリーでダウンロードできます。CKDと脳卒中の関連が盛んに研究されていますが、アルブミン尿も脳卒中のリスクファクターであり、なぜそうなるかが、よくわかりました。腎臓の濾過機能は糸球体が担っていますが、これは片腎に約100万個あり、1日約150lの血液を濾過、そこには約6kgのアルブミンが存在しますが、健常者では漏れ出るのがたった30〜299mg/日。大変な臓器です。また、メチルグリオキサールが、活性酸素と共謀して新たなラジカルを発生し、細胞傷害を引き起こすそうですすが、これを東北大学発ベンチャー企業である株式会社トリムメディカルインスティテュートで測定できるそうです。治療抵抗性の高血圧の中に、原発性アルドステロン症があり、アニオンギャップをきちんと見ることを強調されました。アニオンギャップ=Na-Cl-HCO3で、腎不全がなければNa-Clは36くらいが正常、このバランスが崩れている場合は、原発性アルドステロン症を考えて精査すべきとのことでした。
 午後は日本神経学会の総会、ついで2008年度の学会賞・楢林賞の記念講演がありました。学会賞の新潟大学小野寺理先生からは、脊髄小脳変性症のポリグルタミン鎖に関するご講演、神経細胞が非分裂細胞であり細胞の寿命が長い、したがって、細胞の内部環境維持が重要であるというお話が感銘を受けました。また、新潟大学の先生方が詳細な臨床的観察を記録していたことも印象的でした。楢林賞の順天堂大学望月英樹先生からは、パーキンソン病の遺伝子治療のご講演がありました。すでにいろいろな手法が試されていて、今後の臨床応用が期待されます。
 その後は、会長の東北大学神経内科の糸山泰人先生の会長講演。最近話題のneuromyelitis optica(MNO)のお話ですが、aquaporin4抗体を介してastrocyteが障害されるのが主要病態であるということです。しかし講演の中で、かつて日本では、多発性硬化症がアジアでは少なく視神経脊髄型多発性硬化症が多いと考えられていたわけですが、これが多発性硬化症ではなくMNOであるとの考えに至る過程を強調されていらっしゃいました。
 つぎに、50周年記念シンポジウムとして、日本の神経学の歴史についてのプレゼンテーションが、黎明期を支えた先生方よりありました。日本の「神経内科」は、精神科や脳神経外科より若いんですね。

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