第51回日本核医学会学術総会


つくば国際会議場で第51回日本核医学会学術総会が始まりました。

まずは緊急合同シンポジウム「福島第一原子力発電所事故による放射性物質漏えいについて」。核医学学会はサイトで情報を出していますが、マスメディアでは未だ間違った解釈を垂れ流し。少なくとも専門家集団である核医学学会会員は、正しい情報を持とう、というものです。長崎大学の長瀧重信先生からは、チェルノブイリ原発事故の調査のご経験から福島原発事故との対比が示されました。当時の報道は、「原発のなかで2,000人が亡くなり、周辺住民の5万人が放出された放射性物質のためなくなった。」と。住民はパニック状態で、長瀧先生方専門家は、まず子を心配する親たちを安心させることだったそうです。UNSCEARが発表した“正確な情報”は、原発内部で124人がacute radiation syndromeを示し、高線量被曝で他界されたのは28人。清掃作業や石棺の建築に携わった作業員24万人は平均100mSv被曝したが、明らかな健康被害は認められませんでした。汚染された牛乳を飲用した児童に6,000人の甲状腺癌が発見され、15人が亡くなっています。それよりも、精神的なダメージで数百万人が自立できない状態にあるそうです。実はチェルノブイリ原発事故が放出した放射性物質は、原爆実験よりも少ないらしいです... 東北大学福田寛先生からは、放射線の生物への影響について。確定的影響と確率的影響があります。確定的影響は閾値があり、それ以下では何も起こりません。例えば皮膚は、2〜3Gyの被曝で紅斑が生じます。18Gy以上では難治性の潰瘍や壊死を生じます。確率的影響はDNA損傷とその修復エラーなどにより将来の発癌・癌死のリスクです。広島・長崎の被爆者のデータがevidenceになります。白血病は7年後にピークとなりその後減少。固形癌は10年後以降に発生しその後増大。しかし、100mSv以下の被爆者は癌死の有意な増加がない。福島原発事故では確定的影響はなし、確率的影響は500mSvを超えた可能性がある4名(だったか、抄録では2名)の作業員だけが考慮される。福島県立医科大学の宍戸文男先生からは、現場の原発事故対応について。1999年のJCO事故を受け、原発事故の被曝に対応すべく毎年訓練を実施、マニュアルもあったそうです。被爆者が大量に押し寄せるかと除染の準備をしていましたが、結局原発内で汚染された12名にとどまったそうです。それから、行政からの指示を待っていてはダメと。大災害では現地への情報もストップ。現場が判断し行動する重要性も強調されました。岡山大学清哲郎先生からは、情報収集について。正確な情報確保が大事だが、マスメディアなどからの情報の乱立と、全く逆の見解を述べる“専門家”も多かったから、現場の大混乱につながりました。そんな中、internetは迅速でlow costなメディアとして有用でした。もちろん、tweetやblodなど個人の見解も乱立しますが。私も情報の混乱の元にならぬよう、サイトのリンクにとどめます... 核医学学会放射線学会REM net放医研ICRPIAEAIRSNsave child。京都医療科学大学の大野和子先生からは、放射線被曝に対する正しい知識について。原子力安全委員会の指針はこちら。原爆後の発癌についてはこちら。Q and Aについては政府のOKがでればネット上にでてくるそうで。

ランチョンセミナーは、近畿大学の石井一成先生から認知症診断のPET・SPECTについて。ECD SPECTは健常者で後頭葉に集積が多い、FDG PETは小脳や側頭葉内側の集積が少ないなど、使用する放射性薬剤による特性を知っておく必要があります。石井先生の論文はこちらこちら。University of Washingtonの蓑島聡先生からはアメリカの核医学事情の講演でした。DaT scanが2006年認可。Wargner先生のNMSP PETによるドパミンD2受容体の画像化から実に30年。Kimらの論文はこちら。Amyloid imagingの総説はこちら。病理付きのデータはこちら。PET/MRIはこちら

Bloggerにはこれ、困るんです... 正確な記事を書くにはデジカメ便利なんですが...

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