第48回日本核医学学会学術総会:3

 まずはカロリンスカ研究所のLars Farde先生より神経科学の分子イメージングの講演を聴きました。おそらくPMODで作ったと思われる、セロトニン受容体のPETのvolume renderingがクルクル回っていました。先日のPMODワークショップのときは、頭のPETで3D画像はピンとこなかったのですが、脳内に限局的に分布する受容体の画像は、3Dにすると脳内の分布がイメージしやすいです。アデノシンA2A受容体画像もそのうちクルクル回してみせましょう。
 精神神経疾患のイメージングのシンポジウムでは、岩手医大の佐々木真理先生から、3テスラMRIによる神経メラニン画像のお話がありました。鉄の沈着の影響を受けやすくその補正が必要とのことですが、パーキンソン病の診療には期待大です。Sasaki,M et al., Neuroreport. 17(11):1215-1218, July 31, 2006とShibata E,et al., Neuroreport. 2007 Mar 26;18(5):415-8.をご覧ください。
 イエール大学のRichard E. Carson先生は、動態解析のご講演がありました。高解像度のPETでは、内頚動脈がMRAなみに描出され、そのカウントの変化をinput functionにできるようです。
 ランチョンセミナーでは、筑波大学の浅田隆先生の認知症の診察のレクチャーを聴けました。まず炊事・買物ができなくなり、次に掃除、洗濯は最後にできなくなる。連続テレビドラマを好む方はまだ軽症、昨日のストーリーを覚えていないと面白くないからです。ある程度進行すると歌番組や相撲が好まれるそうです。瞬間瞬間で楽しめるから。その中間が水戸黄門と。一晩で完結するし、途中がわからなくても結末は理解できるということ? HDS-Rでは、「桜・猫・電車」などの遅延再生が重要だそうです。その間に行う計算は、「100から連続して7を引いてください」と言うべきで、「93-7は?」ではないそうです。柏手を打って、そのまま左右の親指と小指をくっつけて花を作り、次に回転して右手の親指と左手の小指、左手の小指と右手の親指をつけるという動作が、アルツハイマー病ではできなくなる。時計描写も有効です。大きな丸を書いて、時計の文字盤を書いてもらうと、通常は12・6・3・9を書いて間を埋めていきますが、アルツハイマー病では1から書き始め、10や11のあたりが間隔が空いてしまうそうです。さらに11:10を指すように針を書いてもらうと、長針が10を指すように書いてしまうとのこと。簡単な診療法として、Observation List for early signs of Dementia(OLD)の紹介もありました。詳細はこの論文を。前頭側頭型痴呆は初期にはMMSE満点を取る。しかし、障害部位によってはsemantic dementiaや発動性低下、欲動性脱却などを呈します。レヴィ小体型痴呆は、幻視が特徴ですが、うつと誤認されることが多いそうです。しかし抗うつ剤は効果がなく、しかも副作用が出やすい。うつを合併していると、前頭前野や帯状回前部の脳血流が低下する例もあるそうです。いずれも日常診療にすぐにでも応用できるお話でした。
 午後は脳の一般講演へ、最後に部屋を移って国際医療福祉大の外山比南子先生の包括医療制度の発表を聞きました。包括医療制度が導入されてから、SPECTなど核医学検査がドンドン減少傾向、しかし一時の利益のために検査を省略していると、将来本当に必要な検査もできなくなることを警告されました。先日の千葉県脳卒中講演会でも、国立循環器病センター山口先生は、最近脳梗塞患者の血管の精査を怠っている神経内科医が多いことを嘆いていらっしゃいました。予防が大事なんですから、確かに糖尿病・高脂血症・高血圧・禁煙のコントロールは大事ですが、それは血管の動脈硬化を防ぐため、血管系の精査は必要不可欠です。SPECTは脳全体の血流の状況がわかるわけですから、当然必要な検査です。
 というわけで、核医学学会は終了したのでした。今回は幕張まで自宅から3日間通ったので、疲れました... 来年は旭川です。

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