第108回東葉臨床医学セミナー

 ウィシュトンホテルユーカリで開催された、第108回東葉臨床医学セミナーに参加しました。
 日本大学白神誠先生からは、日本で普及しない後発薬品についてのご講演がありました。厚生労働省の目標は、5年間で30%まで使用率を引き上げたいわけですが、平成20年度で20%弱。アメリカ・イギリス・ドイツでは60%前後です。後発薬品の宣伝は行き届いていますが、患者が必ずしも後発薬品を希望しているわけではないというアンケート結果をご提示いただきました。薬局で後発薬品の説明を受けても変えない患者が約20%、主治医に相談する方が13%。安かろう、悪かろう、という意識もあるのでしょうか。それから、医師・薬剤師が後発薬品の品質に不安を感じていること、情報提供や供給状況に不満をもっていることも後発薬品が普及しない要因です。実際、後発薬品メーカーが不良品を出したという新聞報道もありました。後発薬品全体が悪いわけではなく、企業間のモラル・ポリシーの格差があるようです。それなら、厚労省はダメな企業を排除するくらいのことをしないと、後発薬品の信用は保てないのではないでしょうか。私がバイトしている某病院は巨大グループなので、昔から後発薬品を積極的に導入していましたが、吟味してグループ内での採用を決めています。それぞれの病院が医師や薬剤師の経験のみで判断するのは不可能です。
 東北大学伊藤貞嘉先生からは、高血圧の診断について講演がありました。昨年の神経学会総会のランチョンセミナーでも拝聴いたしました。原発性アルドステロン症のガイドラインはこちら。一見本態性高血圧でそれなりにコントロールできている2症例が実は原発性アルドステロン症Cushing症候群。アニオンギャップ(AG)はNa-Cl-HCO3-、健常者では12mEq/l程度のきわめて狭い範囲にコントロールされています。ケトアシドーシスや乳酸上昇では増加しますが、外来に歩いて来院されるような方では12。HCO3-は24。つまり、Na-Cl=HCO3-+AG=24+12=36。これが大きければ代謝性アルカローシス、原発性アルドステロン症を考慮します。東北大学例では、約5割がKが正常範囲内だったそうです。ARB使用中はKが増加傾向になるが、正常下限に近い場合は、低K血症も考慮しなければなりません。そして副腎静脈サンプリング。ACTHを負荷し、左右副腎静脈から血液(PAC、コルチゾール)を採取する。典型的には病側のアルドステロン過剰分泌と、健側の抑制が見られる。病側total adrenalectomy。CTで副腎の腫大がある方が病側とは限らない。アドステロールシンチはムダと。PAC/PRA≥20。ARB服用ならPRAは増加のはず。腎性高血圧の機序もわかりやすく解説いただきました。伊藤先生のreviewはこちら。アルブミン尿についてはこちら。ORIENT studyはこちらROADMAP studyは投稿中とか。ACCOMPLISH studyはこちらこちら。ARBの併用薬として、顕性蛋白尿や浮腫がある人は利尿薬(脱水に注意)、ない人はCa2+遮断剤。早朝高血圧のときは夜の投与でもいいし、重症高血圧ではlong actingにならないこともあり1日2回投与でもよいとのことでした。RA系の降圧剤では、脱水・下痢.心不全・手術前などに過降圧に注意。

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