第1回千葉県脳卒中急性期医療協議会


 三井ガーデンホテル千葉で、第1回千葉県脳卒中急性期医療協議会を開催しました。脳卒中協会理事長の山口武典先生と専務理事の中山博文先生をお招きしました。医師40名、消防隊54名、県庁3名、薬剤師2名、合計99名と、多数のご参加をいただきました。
 山口先生からは、t-PAの本邦の実情と脳卒中協会の活動についてご講演いただきました。日本の脳梗塞の年間症例数は約20万人と推定され、t-PAを実施例が年間約8,000例、全体の2%程度にすぎません。受診の遅延、搬送の遅れ、受け入れる医療機関の不備などが原因ですが、千葉県の場合は、特に医療機関のスタッフ不足が問題です。全国には未だにt-PA未実施の医療圏が存在するなど、地域差が問題です。千葉県での地域差はこちら。日本での使用量は0.6mg/kgであり、欧米の0.9mg/kgより少ないわけですが、アルテプラーゼの市販後調査では、ヨーロッパの調査SITS-MOSTと、まもなくStrokeに掲載予定のJ-MARSの結果を年齢・重症度を合わせて比較すると、治療効果はほぼ同等だったそうです。J-ACT IIでは、0.6mg/kgでも再開通例が予後良好であることが証明されました。症例数が多い施設で頭蓋内出血が少ないというデータもあり、SCUを有した施設に集約することが理想ですが、千葉県は経営母体も出身医局もバラバラ、富山県のような大英断ができるかどうか...
 中山先生からは、さまざまなエビデンスをふまえ、脳卒中対策基本法がなぜ必要なのかが解説されました。t-PAは高価な薬剤ですし、超急性期脳卒中加算12,000点(12万円)もつきます。日本医科大学千葉北総病院脳神経センターはさらに脳卒中ケアユニット加算もつきます(5,700点/日)。しかし、その後のリハビリテーションに要するコストや介護施設に要するコストも考慮すると、医療費が節約できます。これには、労働力の損失は考慮されていませんから、社会復帰ができる場合は社会に貢献していただけるわけです。しかし、なかなかt-PAが適応できない一番の理由は、発症早期に専門病院に到着できないことです。実は、初発の患者より、再発の方が意外と救急車を使わないらしいです。まずはかかりつけ医に相談されたり受診したりされる様です。やはり、普段我々が忙しそうにしているのがいけないのでしょう。日頃の診療での啓発も重要です。初発の方は当然脳卒中に関する知識は乏しいわけですが、その啓発には、市民公開講座を実施しています。しかし、市民公開講座にいらっしゃる方はもともと健康に関する意識が高い方、そうではない方に情報が伝わりません。そこで威力を発揮するのがマスコミです。脳卒中協会もACジャパンの広告キャンペーンを利用しています。しかし中山先生は、もっと効果があるのが学校教育とおっしゃいます。これには、脳卒中協会や脳卒中学会の力では困難。したがって行政の力が必要ですし、それには法律が必要なのです。改正消防法で脳卒中の救急搬送システムも改善されつつあります。更なるインフラの整備には、実態調査など評価が必要です。しかし、個人情報保護法があり、電話調査などはできません。調査の体制にも法律が必要です。
 パネルディスカッションでも、活発な意見交換がなされました。北総救命会の活動が紹介され、CPSSを使ったトリアージも行われています。しかし、救急隊員のPSLSも自主参加。法律ができれば、PSLSなども勉強も自費参加ではなく、業務の一環としてできると思います。川崎医大は遠隔医療の試みもしているようです。ドクターヘリは搬送時間を短縮しますが、夜や悪天候時は飛びません。
 9月に第2回を予定しています。次回は今回得た知識をふまえ、具体的な対策を話し合いたいと思います。
 脳卒中学会でも話題になっていましたが、ラクナ梗塞のような軽症の脳梗塞は一次〜二次救急、意識障害を伴うような重症は三次救急ということでは、stroke care unit(SCU)は有効に運用されません。重症の脳梗塞は、t-PAで完全回復する場合を除けば、どの病院で診療しても予後は大きな違いはありません。生死の違いがあるかもしれません。しかし、ラクナ梗塞では社会復帰か退職かの違いがでる可能性があります。そうすると、社会にとっては、税金を払う側か、税金を使う側か、の違いもあります。また、stroke in evolusionもあります。stroke in evolusionはまだ解決策がないので、SCUで見ていれば大丈夫かというとそうではありませんが、他施設に搬送された症例が悪化したためその医療機関に不信感を持って当院に転院する場合もあります。重症は三次救急に搬送、とする地域では、二次救急でSCUを持ちt-PAを常時できる体制の施設を用意しなければなりません。例えば荏原病院です。そうじゃないと、重症でリハビリテーション病院に転院できない患者で三次救急のベッドがふさがり、搬送を断る事態になります。あるいは、救急搬送は全て三次救急で受けて、急性期のうちに二次救急病院に転院するシステムです。



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