第35回日本脳卒中学会総会 2

 脳卒中学会2日目、印旛脳卒中地域連携パスの運用実績について報告しました。入院日数が減少し(脳卒中全体で約2日、パス患者では約3日)、包括医療(DPC)であるから医療費を削減したわけです。しかしながら、当院ではMSW業務を脳外科医が実施している状態、「時代に逆行している」とご批判いただきました... でも、県庁と共同で連携パスの仕事をしていくなかで、日本医科大学にもアピールできて、やっとMSW増員が決まりました。
 脳卒中学会には珍しく、ノンフィクション作家の関岡英之さんから、構造改革が実はアメリカの思惑で進められたものだった、という講演がありました。郵政改革も本丸は簡保。AIGなどアメリカの保険会社が日本に参入するには、簡易保険が上場し買収できる状態が必要だったとか。そして最大の官、医療保険も狙われています...

 ランチョンセミナーでは、立川病院篠原幸人先生の抗血小板療法に関するお話を聞きました。2001年本邦でアスピリンが脳梗塞再発予防のための抗血小板剤として認可されたのは、米国に遅れること21年。本邦でも抗血小板療法の大規模試験としてCilostazol Stroke Prevention Study(CSPS)が実施されました。プラセボに対してシロスタゾールが脳梗塞の再発予防に効果があることが明らかにされました。さらに、アスピリンとの比較がどうか、CSPS IIが実施されました。非劣性の基準、ハザード比の95%信頼区間上限値1.33以下をクリアしました。出血性合併症は有意に減少しました。Sarpogrelate-Aspirin Comparative Clinical Study for Efficacy and Safety in Secondary Prevention of Cerebral Infarction(S-ACCESS)はサルポグレラートとアスピリンの比較でしたが、非劣性は証明されませんでした。しかし、本邦でアスピリンの効果を調査した大規模試験として評価でき、negative studyでもStrokeに掲載されています。
 特別シンポジウムは、脳卒中協会が中心になって活動している、脳卒中対策基本法についてでした。脳卒中協会理事の中山博文先生から、その概要が解説されました。埼玉医科大学高度救命救急センターの堤晴彦先生は、Prehospital Stroke Life Support(PSLS)とImmediate Stroke Life Support(ISLS)など、市民・救急隊と急性期病院の連携の重要性を話されました。慶応大学リハビリテーション科の里宇明元先生からは、リハビリテーション医の不足、ご自身の介護の経験から、家族へのサポート体制の必要性が強調されました(熊本市民病院の橋本先生から、リハビリテーションの講座の不足が指摘されました)。日本理学療法士協会の半田一登先生は、健康日本21の活動が紹介されました。全国脳卒中者友の会連合会の坂口正徳先生は、リハビリテーションの日数制限の撤廃を訴えました。日本医療政策機構の乗竹亮治先生は、All Japanで脳卒中対策を、とおっしゃいました。国立がんセンター垣添忠生先生は、先行するがん対策基本法の3年間の運用実績が報告されました。厚労省に何度も法制化を進言しても結局動きがなかったが、患者の声で動き出した、とのことでした。衆議院議員の石森久嗣先生からは、このがん対策基本法の検証が、脳卒中対策基本法設立にも重要なデータとおっしゃいました。千葉県では6月12日に第1回千葉県脳卒中急性期医療協議会を開催し、脳卒中診療体制を考えるきっかけにします。本日のポスターで、前橋赤十字病院の朝倉健先生が群馬県でのネットワークについて報告されましたが、類似のシステムは千葉県にも必要です。

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